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コミカル三国志(第一部)  作者: ダメ人間
第十六章 同族の末路
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四百一.部下を心配させない

 一方、下邳の城の方はというと・・・


「「かくかく、しかじか、ペペペンペン。」」


 許汜きょし王楷おうかいが袁術からの返辞を呂布に伝えていた。


「―――やはり娘を人質として差し出せというわけか。」


 彼らの言葉を聞いた後、三百七十話での袁術との交渉を思い出して呂布は呟いた。


『君を信頼できない。』


 社会人として辛い言葉であるが、彼にとっては自業自得の言葉である。


「・・・内容は良し。しかし、問題はどのように事を成すかだ。」


 複雑な心境ではあるが、それを(おくび)に出すわけにはいかない。

 一軍の大将として、部下を心配させるわけにはいかないのだ。


 心配は迷いに、迷いは判断を曇らせる。


 愛娘を人質として差し出すことに当惑しながらも、彼は今後の方針を進めた。


「我が軍は敵に重囲されておる。どのようにして娘を送るか?」


「・・・恐れながら申し上げますが、ここはやはり、将軍直々に送り立たぬ他ありませぬ。」


「むぅ。・・・娘は俺の命につぐものだ。蝶よ花よと温室で育て、世の寒風かんぷうに当てたことのない白珠しらたま(=愛人や愛児の例え言葉)である。俺自身が淮南の境まで守ろう。」


 呂布も遂に覚悟を決めた。

 彼は張遼と侯成こうせいを呼ぶと、彼らに三千の兵を授け、軍中に車を一台用意させた。

 この車は敵の注意を逸らすダミーである。

 車には娘を乗せず、呂布は自身の背に娘を乗せた。

 娘を安全な地まで運ぶには、自分の背が一番安全だと彼は判断したのだ。


 何も知らない十四の花嫁は、寒さを凌ぐための厚い布と身を飾る錦繍きんしゅうにくるまれて、父の冷たい甲冑の背に、しかと結ばれたのであった。

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