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コミカル三国志(第一部)  作者: ダメ人間
第十六章 同族の末路
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三百七十.子供を大切にしよう

 どこかで可憐な乙女の歌う声がする。

 徐州の城より十里先は戦乱のちまたというのに、この一郭は静かな秋の陽に満ちていた。



娘は花よキャッピキャピ♪千里も香る~高嶺の花♪

蜜蜂ブンブン♪万里を飛ぶ~♪花を求めて飛んで来る♪

蜜蜂花見て、チュッチュチュチュッ♪

花は蜂見て、アンアン♪イヤーン♪

蜜蜂飛んで花は咲く♪



 徐州城内の禁園で、十四ばかりの少女が、芙蓉ふようの花を折りながら歌っている。

 呂布はその声に、後閣の窓より顔を出した。

 いつもの厳つい眼ではなく、一人の父親としての優しい眼で歌を歌っている乙女を見つめた。


「――――あっ!? お父様!・・・はずかしい♪(*/ω\*)」


 父の存在に気付いた娘は、顔を紅らめながら、母たちの住んでいる北苑ほくえん深房しんぼうへと駆けこんでしまった。


「ははははは。無邪気な姫君でいらっしゃいますな。」


「う、む・・・。まだ、十四の娘だからな、可愛いじらしいよ。」


 傍にいた家臣の郝萌かくぼうの声に、呂布は腕を組んで答えた。



 ―――少々時は遡り、曹操と劉備の密書を手に入れ、戦が始まったその日、呂布は淮南わいなんの袁術の元へ使者を送っていた。


「再度、再び、もう一度!婚約話を復活させよう!!」


 使者を送った理由は以上の通り、袁術の息子と自分の娘を結婚させるためである。


 曹操と劉備。


 二人の英雄を相手にするには、それ相応の戦力が必要だと判断し、呂布は袁家との婚約の儀を蒸し返したのであった。


 で、


 使者からその伝手つてを聞いた袁術は、家臣を集めて一議を開き、一つの結論を出した。


『呂布は信用できない。』


 安易に婚儀を結ぶのは危険と判断した袁術は、一書を使者に渡して呂布の元に送り返した。



“貴公の言を今一つ信用できない。

そこで、愛娘の身を先に淮南に送りたまえ。

さすれば、充分な好意を持って返答しよう。”



 袁術のしたためた一書の内容を要約すると、「愛娘を人質として差し出せ。」ということであった。


 この返答に呂布は、


「・・・やむを得まい」


 と、愛娘を袁術に差し出そうとした。

 ところへ、窓際から娘の歌声が聞こえて来たのである。


 可憐で、まだ無邪気な娘の姿を見た呂布は、また気が変わって、


「――――いや、やはり人質として娘を差し出すのはダメだ。この呂布、そこまで落ち目にはなっておらん。袁家との婚約話はもっと先でよかろう。」


 と言って、使者役を務めた郝萌を下がらせたのであった。

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