三百二十八.時には流れに身を任せよう
罪が不問にされた陳親子であったが、二人はその代わりとして、
『敵を反乱させる手段を講じるべし!』
という任務を背負わされることとなった。
そして、陳家への帰宅途中にて・・・
「――――父上、危ない所でしたな。」
「うむ。もう少しで首を刎ねられる所であった。・・・呂布の奴が単純で助かったわい。ハハハハハ。」
陳登の不安げな言葉とは裏腹に、陳珪はケラケラと笑っている。
「それにしても父上。父上に何か妙案があるとは知りませんでした。」
「妙案?そんなものは無いぞ。微塵も無い。」
「えっ!? で、では、これからどうするのです?」
「知らん。明日は明日の風が吹く。わしはその風に身を任せるのみじゃ。ハハハハハ。」
陳大夫は屋敷に戻ると考えるのを止め、また、いつものように年老いた病人に返ってしまったのであった。
一方、袁術の方では大きな動きが起こっていた。
ついに袁術が孫策より預かっていた玉璽をとりあげ、皇帝を名乗ったのである。
「四百年続いた漢王朝の歴史はもはや潰えた!これから先は予が政を執り行う!汝ら諸々の臣たちよ!朕を助け、朕に忠良なれ!朕朕!」
慢心した暴王を止められる者は身内にはいなかった。
反論を述べれば断罪。
異論を唱えれば断頭。
正論を吐けば断首。
彼に逆らう者たちは、次々に首と胴体が離れて行き、葬儀屋が儲かって儲かって仕方ないという状況下になっていた。
さらに袁術は、臣下を黙らすために、督軍、親衛軍の二軍団を率いて、自ら徐州攻略に乗り出した。
「退けば殺す!進まねば殺す!後死生進!者ども!突き進め!!」
督軍、親衛軍の二軍団が後ろに控えると、前衛二十万の兵たちは、
「いよいよ合戦は本腰か!!」
と、気を引き締めたのであった。




