三百二十七.量だけでなく質も大事
呂布は城に呼びつけた陳珪親子を前にすると、たちどころに彼らの罪を責め、二人の首を刎ね飛ばそうとした。
すると陳珪は、
「フフフ・・・ククク・・・ヒヒヒ・・・ホホホ・・・ヘヘヘ・・・アハンアハン!アハハハハン!!!」
と、高笑いを始めた。
「な、何がそんなにおかしい!」
呂布が顔を般若の如く歪ませて怒りの問いをすると、
「病に死なず、花も咲かず、枯れ木の如く老衰したわしの首など本小説の一話程度の価値しかありませんぞ。(=価値なし)」
「それに豪勇をもってなる呂布将軍が思ったより臆病者なのが、おかしくて、おかしくて・・・・アハハハハハ!!」
と、なおも笑いながら答えた。
陳珪の答えに呂布は目をくわわっ!と怒らせたが、そんな彼のニの言葉を制し、陳珪は話を続ける。
「将軍の怯えている淮南の大兵二十万ですが・・・あれらは烏合の衆に過ぎませぬ。」
「なぜならば、袁術は皇帝の座に就こうという野心から、兵を急激に増やしました。その結果、兵と将の質は落ち、数だけが特筆している雑軍となっております。」
「第六将の韓暹は山賊上がりのチンピラ、第七軍の楊奉は曹操に追われ、居場所を失って仕方なく袁術の下にいるヒモ。」
「その他どの顔ぶれを見ても、一時しのぎに袁術にくっついている者ばかりです。」
「こんな烏合の衆に恐れている将軍を臆病者と言って何が悪いのですか?」
陳珪の演説を聞いた呂布は、「むむぅ。」と唸った。
「そこまで言うのなら何か良い案はあるのか!!」
「もちろんですとも。ここまでの大言を吐いておいて『策なし』では格好がつきませんから。」
「むむ、策ありと申すか・・・ならば述べよ!!」
せきこむ呂布に慌てず動じず、陳珪は一呼吸置いた後、澄まし顔で策を述べた。
「先ほど申しました通り、淮南軍は欲深い人間ばかりが集まった烏合の衆です。」
「そんな彼らを『利』を以て抱き込み、反乱を起こさせるのです。」
「その間に我々は劉玄徳と手を結び、軍の増強を図ります。」
「劉備は温良高潔の士。苦境に立たされているあなたを決して見捨てますまい。」
陳珪のさわやかな弁舌に呂布は聞き惚れていたが、
「い、いや、俺は別に袁術軍が怖くてお前を叱責したのではないぞ。うん。ただ、大事をとって諸将に意見を仰いだだけだぞ。うん。だ、だから・・・べ、別に袁術なんて怖くないんだからね!そこんところ、勘違いしないでよね!!」
と、負け惜しみを言って、陳親子の罪を不問にしたのであった。




