三百一.予定は未定である
後園から木蘭の花の香りがほのかに匂ってくる。
呂布のような漢でも、普段は一人の良い父親である。
袁術から娘に縁談の件を持ちかけられた呂布は、正妻の厳氏に相談していた。
会話内容は省略させて頂くが、厳氏は「いいんじゃないの?変な虫につかれるわけではないのだから。」と縁談に好意的な意見を述べた。
雌鶏の言葉に雄鶏が羽ばたきした。
呂布も縁談話を受け入れ、使者である韓胤に承知の旨を伝えた。
その翌日。
難し屋の陳宮は、朝から政務所の閣にひかえ、呂布が起きてくるのを待っていた。
「ふわぁ~~~!良く寝た!!」
やがて呂布が起きて来た。
「おおっ、陳宮ではないか。こんな時間に何用だ?」
「ちと、お話がありまして。」
「何かな?」
「袁家との縁談話についてです。」
陳宮の顔つきを見た呂布は、ちょっと当惑した。
(また俺を諌めに来たのか?)
諌言家である陳宮の小言を朝から聞くことになるのかと、呂布は少し憂鬱になった。
「・・・縁談話が何かね?」
「・・・随分と不機嫌ですね。話は後にしましょうか?」
「い、いや、そんなことはないぞ。俺は良機嫌だ。後ではなく今話してくれ。・・・とはいえ、史員どもが出てくると五月蠅いので、この場はマズイ。・・・あの亭に行こう。」
閣を出て、木蘭の下を歩いた。
二人は水亭の一卓を囲んで話を再開した。
「もう知っていることであろうが、妻の厳氏と話をして、娘を猿家に嫁がせることに決めたよ。」
「結構でしょう。」
「結構?ならば話とは何だ?」
てっきり縁談話を反対されると思っていた呂布は拍子抜けした。
緊張感は無くなり、いつも通りの二人のやり取りへと変わる。
「縁談を受けるのは良いのですが、時期が問題です。・・・挙式はいつとしましたか?」
「いや・・・まだそこまでは決まっていないが、古来からのしきたりに習おうと思っておる。」
「それはいけません。」
「何故だ?」
「世上一般の慣例としましては、婚約の成立した日から婚儀までの期間を、身分によって四いろに分けています。」
「天子の式典は一年、諸侯は半年、武士諸大夫は一季、一般ピーポーは一ヶ月。・・・であろう?」
「その通りです。・・・では将軍。あなたはどれで挙式を上げるおつもりですか?」
「えっ!? それは・・・えと・・・う~む。」
呂布は悩み顔で、
「袁術は玉璽を所有しておるから、早晩、息子は天子となるかもしれない。だから天子の例に習って、一年かな。」
「違います。」
「えっ!? 違うの!? ・・・じゃあ、諸侯の半年か?」
「NOです。」
「ええっ!? これも違う!? ・・・では、大夫の一季か?」
「チンです。」
「・・・しからば、庶民の一ヶ月か?」
「不正解。」
「じゃあいつだよ!俺に一体どうしろというのだ!!」
一年×
半年×
一季×
一ヶ月×
世上一般の慣例の四いろを否定され、呂布は思わず声を荒げた。
上記に答えが無いとすれば一体それはいつなのか?
乱世と言うこの世を考えれば、この先の陳宮の答えも少々納得がいくだろう。
・・・でも残念!本話では話の続きを書きません!!
引き伸ばしのために次話に続きます!
さようなら!!
続く!!




