三.都合が悪いのは仕方ない
「優男ってのは・・・私のことですか?」
初対面の男にいきなり優男なんて言われたら普通は怒る所だが劉備は虎髭男に怒ることなく返事をした。
そんな劉備に対して虎髭男はぶっきらぼうに言葉を吐いた。
「ああそうだ。優男。お前は参加しないのか?」
「・・・ええ、参加するつもりはありません。」
「何故だ?」
「私には母がいます。母を1人にするわけにはいきませんので参加しません。それに・・・。」
劉備は言葉に詰まった。
『母を1人にしたくないから参加しない』。これは本音である。
しかし、それとは別にもう1つ本音がある。それはとてつもなく情けない本音だったので言葉に詰まったのだ。
「それに何だ?まさか自分は力が弱いから参加できませんとでも言うつもりなのか?」
劉備が言葉に詰まっていると虎髭男が先に劉備の本音を言い当ててしまった。
「・・・そうです。その通りです。私には力がありません。力の無い私が参加しても足を引っ張るだけでしょうから。」
「・・・根性無しが。期待外れだな。」
「何を期待していたか知りませんが、そういうあなたはどうなんですか?あなたは参加しないのですか?」
「・・・俺には俺の都合がある。今の俺は都合が悪いんだよ。だから参加しねぇんだよ。」
「そうですか。都合が悪いなら仕方ないですね。ではこれにて失礼します。」
劉備は虎髭男にそう言うと逃げるようにその場を立ち去ろうとした。
劉備が数歩歩くと虎髭男がまた話かけた。
「まて!念のため1つ確認したいことがある!」
「何でしょうか?」
劉備は振り向きざまに虎髭男に返事をした。
「優男。お前の名前は劉備で間違いないな?」