二百八十一.人生は行動あるのみ
「太史慈・・・お前わかっておるのか?どう考えても罠だぞ?」
「そうかもしれません。しかし、こんな機会に、ただ黙って指をペロペロして見ているだけでは戦場に来た意味がございません。何とぞ拙者にご命令を。」
「う~む。・・・それほど言うのならよかろう。しかし、お前一人で行くのだぞ。」
「それはもとより覚悟の上です。・・・ではでは、これにて馬に跨り、討ってまいります!・・・ハイヨー!シルバー!!」
主君より命を頂いた太史慈は、喜び勇んで孫策を捕らえに向かった。
そんな彼を諸将たちは、
「まったく、馬鹿な奴よ。ああいうのを猪武者と申すのであろうな。・・・あはははは!」
と、小馬鹿にしたのであった。
「――――ふむふむ、なるへそ、わかったぞ。」
一方、孫策は山中より劉繇の布陣を見ていた。というよりも、正確には見終わっていた。
劉繇たちが、あーだこーだそーだと悩んでいる隙に、彼は布陣の細かな点まで観察を終えていた。
「もう十二分に覗いたので、そろそろ帰るとするか。」
スパイ活動を堪能した孫策は馬を自陣の方へと向けた。
そこへ、麓の方から、
「待てっ!孫策!逃ぐるなかれ!!」
「太陽と月の追いかけっこにはさせんぞ!そこで待機するのだ!」
「逃ぐるなかれ!逃ぐるなかれ!!」
と、彼を呼ぶ声が上がった。
「!? 誰だっ!!」
振り返って見るに、太史慈が槍を携え、馬を躍らせて、山中へと登ってきた。
「敵将の孫策で間違いないか?」
太史慈が槍を横に構えて尋ねると、
「・・・だとしたらどうする?」
と、孫策が疑問文を疑問文で返す。
「拙者は劉繇の家来で太史慈と申す!貴公の首を頂戴いたす!!」
「くはははは!物好きな漢だ!・・・取れる者なら取って見ろ!!」
瞬間、両者共に槍を構え、臨戦態勢に入る。
「承認得たのでいざ参る!・・・孫策!覚悟!!」
太史慈は掛け声を上げ、馬を打って孫策の元へと走りこんだ。




