二百五十四.駆虎呑狼の計
荀彧の考えた策『二虎競食の計』を上手くかわした劉備。
しかし、曹操の右腕たる荀彧の考えた策はこれだけではなかった。
劉備と呂布を争わせるため、荀彧は第二の矢を放つのであった。
「――――『駆虎呑狼の計』にございます!」
荀彧はへこむことなく、自身たっぷりドヤ顔で第二の策の名を叫んだ。
『人間、つまづくのは恥ずかしい事ではない、立ち上がらない事が恥ずかしいのだ。』
某漫画の警察官のセリフであるが、一度や二度でへこむなど人生においては無駄である。
人生は失敗の連続であり、「失敗の汚名を如何に返上するか?」ということが重要なのだ。
そして、知者である荀彧はそのことを重々と承知していた。
(それでこそ私の部下にふさわしい!!)
荀彧の堂々たる姿に、主君である曹操は大満足であった。
・・・話が少々それましたが、以下より記載するのが荀彧の策の全貌となります。
彼の演説をご清聴下さいませ。
「――――まず、袁術の元に使いを出し、こう伝えます。『近頃、劉備は南陽を攻め入らんと帝に願い出ている』と。」
「また、劉備の元にも勅使を出し、『南陽の袁術!朕の言うことを全く聞かない反逆者!早々に兵を向けて奴を殺せ!』と命じます。」
「馬鹿正直な劉備のこと。『天子の命は断れない。』と南陽へ出兵するに違いありません。」
「するとどうでしょう?虎の巣穴は空になり、そこに狼が取り残されます。」
「『留守』という『エサ』を狼が見逃すはずがございません。」
「狼はエサをたいらげペロリンチョ!劉備玄徳、THE・ENDです。」
※荀彧の策略整理
1.袁術の元に使いを出し、劉備が南陽を狙っていると伝える。
2.劉備の元に勅使を出し、袁術を殺せと命じる。
3.正直者の劉備は勅命を断れず、袁術と戦争開始。
4.戦争中は徐州は空っぽ。そこへ狼(=呂布)が喰らいつく。
5.徐州は狼の手中に落ち、劉備は行き場を失い完全終了。
fin
荀彧の第二の策、『駆虎呑狼の計』を聞いた曹操はまたしても感嘆の声を上げた。
「ううむ。『駆虎呑狼の計』か・・・さすがは荀彧。またしても見事な策である。」
「ありがとうございます。」
「聞くにこの計は外れまい。」
「はい。この計は十中八九までは大丈夫です。・・・なぜなら、劉備の性質の弱点を突いておりますゆえ。」
「うむ。・・・前策のような密命ではなく、天子からの勅命と言われると身動きのつかないのが劉備だ。・・・よし!その意見、『可』!荀彧よ!早速準備に取り掛かるぞ!!」
「御意!!」
こうして劉備と呂布殲滅のための第二の策、『駆虎呑狼の計』を実行するため、曹操と荀彧は策の綿密な打ち合わせを行うのであった。




