二百四十八.二虎競食の計
「まず、私は許褚殿とは違い、不戦論者です。」
「なぜなら、許昌に遷都して以来、宮門整備等の建築、また兵備施設の増強など、都造りに何かとお金がかかっているからです。」
「そのため、お金のかかる武力による戦ではなく、外交的な戦略により彼らを自滅に導くのが上策かと思われます。」
「そして、その策なのですが・・・これより、私が考えた『二虎競食の計』という策略を述べさせて頂きます。」
1.例えば、二匹の腹を空かせた虎がいるとします。
2.そこにエサを投げ込みます。
3.エサを見た二匹の虎は、たちまち本性を現して咬み合います。
4.すると、必ず一頭が倒れ、残ったもう一頭は傷だらけになります。
5.傷を負った虎を討つのは超簡単。皮を剥ぎ取り、後はポイッ!です。
fin
「ここで、この策の肝となる『エサ』ですが、今、劉備は徐州の太守の座に坐っておりますが、前太守の陶謙より譲られただけで、帝から正式に任命されたわけではございません。」
「そこで、それを『エサ』として、劉備に対して、『徐州の太守として認める代わりに呂布を殺せ!』と密命するのです。」
「劉備が成功すれば呂布が死に、劉備が失敗すれば呂布が彼を殺してくれます。」
「そして生き残った方はズタボロになり、虎の敷物のような最期を迎える他ありませぬ。」
「・・・以上が私の考えと提案する策略となりますが・・・如何でしょうか?」
荀彧の考えを聞いた家臣一同は、皆、特に反論なく納得の表情を浮かべていた。
「ううむ。『二虎競食の計』か・・・。荀彧よ。見事な策である。」
「ありがとうございます。」
「うむ。・・・私はその策を『可』とするが・・・皆は異論ないか?その他、質問でも何でもよいぞ?」
「「特になかで~す!!」」
「よし!では荀彧よ!早速準備に取り掛かるぞ!!」
「御意!!」
家臣全員からの承諾を得た『二虎競食の計』を実行するため、曹操と荀彧は策の綿密な打ち合わせを行うのであった。




