表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミカル三国志(第一部)  作者: ダメ人間
第九章 奸雄の転戦
231/421

二百三十一.命は金より重い

 楊奉の部下に『徐晃じょこう』という勇士がいる。

 徐晃は栗毛の馬に乗り、大斧を振り回して、李傕軍の兵士たちを瞬く間に薙ぎ倒していった。


「なんじゃらほ~い!もうどうにもなりまへんわ~!!」


「うぉう!やられた!!バカげたスピードで皆がやられていく!!」


「大斧で真っ二つに斬られて内臓をぶちまけて無残に死にますけど文句ありますか?ないでしょうよ?さっさと続き読んだらどうですか?ホンマにムカつく(# ゜Д゜) ムッカー!!」


 パタリパタパタと兵たちが綺麗に倒れて行くその様子は、まるでドミノ倒しの様であった。

 この凄惨な有様に、李傕は慌てて、


「こりゃいかん!皆の者!一時撤退せよ!!」


 と、退却命令を下し、スタコラサッサと一時退却をした。


 かたを付けた楊奉は部下の徐晃と共に帝の前で拝礼した。

 その礼を見た帝は楊奉の手を握り、


「危なきところを救われた!汝の働きは朕の肺腑はいふ(=心の奥底)に刻んでおき、その働きは忘れるまで忘れないでおこう!!」


 と、彼の働きに感謝の意を述べた。



 心強い味方を得た献帝一派は道中を進んだ。

 やがて夜が明け、空が明るくなり始めたその頃、「敵だッ!敵が近づいて来る~~!!」と、思わぬ声が上がった。

 声が上がった方を見るに、敵の数は、昨夜に楊奉たちが追い払った数の数倍はある大軍であった。

 しかもよく見ると、『李傕の旗』だけでなく『郭汜の旗』も掲げられている。

 どうやら帝奪還を最優先に捉えた李傕は、敵である郭汜と同盟を結んだらしい。

 同盟を結んだ彼らは、近隣に住む盗賊まがいの傭兵たちをかき集めて、献帝一派を追いかけて来たのであった。


「奴らは拙者にお任せあれ!」


 そう言って徐晃は敵兵に特攻し、昨日に劣らぬ奮迅ぶりを見せたが、やはり多勢に無勢である。

 それに加えて、帝たちが足手まといになり、彼らはあっという間に窮地に陥ってしまった。


(まずい、まずい!これはいかんぞ!あかんすぎる!!どげんかせんといかん!!)


 昨夜は策が思いつかなかった董承であったが、今日の彼は冴えていた。


(何かないか・・・何かないか・・・これだ!!)


 董承は馬車に積んであった大きな葛籠つづらを手繰り寄せ、その蓋を開けた。

 葛籠の中には珠玉、金の髪飾り、金帯、金、金、金、などの金銀財宝がザクザクと入っていた。

 彼はそれを手に取ると、「うおおおおおおおおお!!」と叫び声を上げ、車の上からそれらを惜しみなく投げ捨てた。


「みんな捨てろーーー!金目のモノは捨てるのだ!金をてて命をひろうのだ!!」


 『金は命より重い』と言うが、それは時と場合によるだろう。

 再起が望めるのならば、今は『命は金より重い』である。


 董承の言葉に、皆も馬車より金目のモノを次々と地面に投げ捨て、大地をキラキラと財宝で輝かせた。

 その輝きを目に入れた盗賊まがいの敵兵たちは、


「うっひょーーー!金だーーー!金だ金だーーー!!拾えーーー!!」


 と、瞳をキラキラと輝かせ、戦闘そっちのけで財宝拾いを始めた。

 それを見た李傕と郭汜が、


「何をしておる馬鹿者ども!そんなモノを拾ってないで帝を捕らえろ!!」


 と、叱責したが、兵たちは皆、


「いやよ~ん!いやいや!財宝拾いの方が大事よ~ん!!」


「だって金ですよ!金、金!金金金金金金金金金金金金金金金金!」


「世の中金だ!金で何でもできる!!ALL I NEED IS MONEY!!(=金がすべてだ!!)」


 と、蛆虫の如く、そこを離れなかった。

 そして、その様子を見た董承はすぐに号令を下した。


「今だ!馬車を走らせろ!!」


 彼の声に合わせて御者ぎょしゃは馬に鞭を振い、急いでその場から馬車を走らせたのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ