二百二十一.逃げ道は必要
「なにぃ!曹操軍が兗州城を攻め落とし、ここまで迫ってきているだと!!」
兗州城陥落の報は、濮陽にいる呂布の耳にもすぐに届いた。
兗州城を攻め落とされてしまった怒りにより、呂布は死人を乏して激高した。
「たったの一話で城を攻め落とされるとは、なんたる不甲斐ない奴らだ!普通は二話ぐらい持つだろうが!作者の都合とはいえ、仕方ないではすまさんぞ!!」
「こうなれば、俺自らが全軍を率いて真っ向より奴らを壊滅させてやる!!」
「城門を開けよ!討って出るぞ!!」
単純な彼は怒りに任せ、無策のまま、城より討って出ようとした。
当然、こんなアホな行為を黙って見過ごせるはずもなく、腹心の陳宮が彼を戒める。
「将軍!討って出ては」
「じゃかあしい!曹操軍がなんぼのもんじゃい!俺は出る!出るんだぞい!止めるなーーーー!!」
「将軍・・・。」
籠城を勧めようとした陳宮の言葉を無視して、怒りに駆られて呂布は出陣した。
(今すぐに兗州を取り返さねば百年の計を誤ることになる!)
兗州を取られた焦りにより、彼は全兵力を動員して曹操軍と対峙した。
呂布の勇猛さは老いることがないのだろうか?
むしろ、彼は年を重ねるごとに技のキレが増していき、文字通り万夫不当の豪傑となっていく。
それが呂布奉先という男なのだろう。
この戦場でも、呂布の強さは圧巻であった。
一振りごとに血が空を舞い、憐れな悲鳴が荒野に響く。
無敵の呂布は曹操兵を次々に屠って行った。
「おおっ!? 敵ながらなんと見事な男だ!相手にとって不足なし!!」
その凄まじい武を目の当たりにした許褚は、精神を高ぶらせ、彼に一騎討ちを挑んだ。
許褚は全身全霊、渾身の力を込めて大刀を一振りした。
しかし、呂布はそれを余裕綽々、いとも簡単に受け止め、方天戟にて斬りかえす。
それをすんでの所で避け、冷や汗を流す許褚。
「自分から向かってくるだけあって少しはやるようだが・・・甘すぎるな。ビターショコラより甘い。それでは俺には勝てんな。」
呂布は許褚に向かい怒涛の攻撃を繰り出す。
上下左右より、一撃一撃が必殺となる刃の嵐が降り注ぐ。
こうなっては攻撃を繰り出すどころではない。許褚は防御するので手一杯となってしまった。
そこへ、悪来典韋が助太刀に入る。
「卑怯千万だが・・・その命!頂戴いたす!!」
典韋と許褚の両雄が呂布に襲いかかる。
しかし、呂布は余裕であった。
「ははははは!二人がかりでもこの程度か!カカオ85%の苦いチョコになって出直して来い!!」
まるで子供の相手をするように両雄を翻弄する呂布。
まさに鬼神。
一対一では絶対に勝てぬ男である呂布に対し、曹操軍は数を武器に攻めかかる。
夏候惇を筆頭に、猛将6名が集まった。
「むぅ!? どうやら俺をどうしても倒したいらしいな・・・だが残念!俺はこの程度ではやられはせぬ!!」
危険を悟った呂布は包囲網の一角を打ち破ると、即座に赤兎馬の腹を蹴り、濮陽城に向かい逃げていった。
包囲網を突破し、城門の下へと逃げてきた呂布であったが、そこで彼は驚くべき光景を目にする。
(!? これでは城に帰還できん!一体どうなっておるのだ!!)
見ると、城門へと通じる吊り橋が跳ね上がっており、濮陽城への出入りが出来ない状態になっていたのであった。




