二百八.危険を回避しよう
大勢の人間を目的地に飛行機で移動させる時、一度に全員を搭乗させず、別便を利用して、二手以上に別れて移動させる時がある。
この理由は無数に考えられる。
・飛行機の遅延
・飛行機の欠航
・飛行機の人数制限
・スケジュールが合わない
etc・・・
この様に、その場の状況や偶然、予期せぬ出来事などにより、理由は無限になる。
そんな無限の理由の中で、特に不謹慎な理由がこれである。
・全滅のリスクを避けるため
飛行機を例に述べさせて頂いたが、これは普段の日常でも起こりうることである。
半分に別けたことで、半分が助かる。
割けることで避けられる最悪の事態。
非情の采配で助かる生命。
万が一の一が起きた時の想定は必須。
2016年現在、人間と機械の両方の頭脳を駆使しても排除できない危険性。
ましてや、本作は今より1800年前の物語。
正確な模擬実験をしてくれる機械などあるはずもない。
考えるのは人間のみ。
田氏からの密書を大喜び受け取った曹操も人間である。
(呂布は無才だが、陳宮は油断ならん。)
曹操はリスクを想定し、軍を三つの部隊に分け、一隊を濮陽城に進行させることにしたのであった。
夕暮時にて、曹操率いる一隊は城攻めを開始した。
「深入りはするな!城に寄せて敵兵の動きを探るのだ!!」
曹操の命令に応じ、兵たちは深く攻め入ることをしなかった。
一進一退の小競り合い。
そう表現するのが一番であろう。
城を守る兵の数は少なく、士気もないように感じられる。
大勢の兵による激しい戦ではなく、少数兵による静かな戦い。
(う~む・・・城兵の数は少なく、飛んでくる矢数も少ない・・・これは・・・。)
時間が経つにつれ、曹操の顔に笑みが浮かぶ。
そして日が暮れ、辺りが暗闇に包まれ始めたその時、城壁の上に一つの旗が揚がった。
「むっ!? あれは『義』の旗!田氏からの合図だ!!」
城壁の上で、『義』と書かれた大旗がゆらりゆらゆらとゆれている。
その旗は、密書に書かれていた城攻めを促す田氏からの合図であった。




