二十.英雄同士は自然と出会う
劉備軍は夜になると行動を開始した。
打合せ通り、少しの兵を黄巾賊の陣の背後に回らせ、主力は前面の茂みに隠れた。
「準備は整ったな・・・では攻撃開始!」
劉備軍は雄叫びを上げて黄巾賊の軍へと進んだ。
眠っていた黄巾賊たちは叫び声を聞いて慌てて飛び起き、叫び声が聞こえた方へと集結した。
「な、なんだあの松明の数は!官軍の総攻撃か!野郎ども急いで戦の準備をしろ!」
劉備の読み通り、黄巾賊は暗闇の中で5000もの赤々と燃え上がる松明の炎を見て慌てふためいた。
「よし!では作戦通りドラを鳴らせ!」
黄巾賊が前面に集中したのを見た劉備は部下に合図のドラを鳴らせた。
ドラの音を聞いた黄巾賊の背後に回っていた劉備兵は松明に火をつけ、黄巾賊の陣へと松明を投げた。
「お、お頭!大変でさぁ!背後から火の手があがっておりやす!」
「なんだと!何故背後から火があがっている!」
「わかりやせん!お頭どういたしやしょう!」
前面へと意識を集中し過ぎた黄巾賊は背後の劉備兵の存在に気付かずに動揺を広げた。
劉備はさらに動揺を広げるためにこう叫んだ。
「よし!彼らとの打合せ通りこのまま陣を焼き尽くすぞ!」
劉備は彼らという言葉を強調して叫んだ。
この言葉を聞いた黄巾賊は疑心暗鬼に陥った。
「裏切り者でもいやがるのか!野郎ども裏切りどもを見つけ次第殺せ!」
疑心暗鬼に陥った黄巾賊の兵たちは同士討ちを始めた。
この隙を逃すことなく劉備は黄巾賊の陣に向かって突撃した。
浮足立つ黄巾賊など恐れるに足らず。
劉備軍は黄巾賊を次々と虐殺していった。
「あちぃ!死ぬぅ!」
「火!俺の体に火がぁーーー!アロバ!!」
「アッチッチ!ゆでだこ!?ゆでだこ!?」
黄巾賊は断末魔を上げながら討伐されていった。
劉備が勝利を確信し勝鬨を上げようとした時、1人の男が馬に乗り、燃え盛る大地を駆け抜けて劉備の目の前に姿を現した。
男はゆらゆらと揺らめく炎を背景に劉備に話しかけた。
「戦場故、馬上にて失礼する。貴公がこの軍を率いている大将殿であられるかな?」
「ええ。私がこの軍を率いている劉備玄徳という者です。あなたは見たところ官軍の将のようですが・・・名はなんと言うのでしょうか?」
「これは失礼した。私の名は曹操、字は孟徳。貴公の戦ぶり、しかと拝見させて頂いた。誠見事なり。」
これが劉備の永遠のライバルとなる曹操との出会いであった。




