十九.現状把握に努めるべし
潁川に着いた劉備は陣内にて朱儁から熱烈な歓迎を受けていた。
「どこぞの乞食軍団かは知らぬが、せいぜい頑張るがよい。・・・そうだ!功を立てやすいように最前線へ配置してやろう!感謝するがよい!ハハハハハ!」
朱儁はそう言って小馬鹿にした表情を浮かべてその場を後にした。
この態度に案の定、張飛がブチ切れたが、義兄2人がなだめた。
ブーブーと文句を言う張飛を引き連れ、最前線に向かうとそこは原野と沼地があたり一面に広がる地域だった。
しかも、地面からすこぶる伸びた草が広がっており、黄巾賊はこの伸びた草の茂みに隠れて襲ってくるとのことだった。
「これはまずいですな。どうなさいますか?」
関羽が劉備に尋ねた。
劉備はその問いには直ぐに答えずに現状把握に努めた。
(敵は数が多く強い。しかも、草の茂みに隠れて襲ってくる。長期戦はマズイ・・・なら、方法は1つ。)
「攻められる前に攻める。奇襲しかないな。」
「奇襲ですか?」
「ああ。この草の茂みをこちらも利用して奇襲を仕掛ける。」
劉備は自分の策を関羽と張飛に述べた。
「兵に松明を10本ほど背負わせて茂みに隠れさせる。また、敵の背後にも少し兵を回しておき、合図とともに前後から攻める。松明の数を見て敵は総攻撃を仕掛けてきたと慌てふためくだろう。名付けて『火を見ると明らか』作戦だ。」
「それは良い策ですな。では早速準備すると致しましょう。」
感心した関羽と張飛は策の準備を始めた。
劉備軍の様子を少し離れた丘のところで2人の男が見ていた。
「・・・なるほどな。なかなか度胸のある大将ではないか。腐った官軍のアホどもとは違うな。」
「手伝わなくていいのか?」
「もちろん手伝うさ。ただそれは、彼らの策が成功した時だけで十分だ。ではその時のための準備をするとしよう。行くぞ、夏候惇。」
そう言って男は部下の夏候惇とともに自陣へと戻って行った。




