百六十七.自分の気持ちに嘘はつけない
董卓は呂布を丞相府に呼び寄せると、李儒の進言通りに彼を優しくなだめた。
「昨日は済まなかった。病気のせいでイライラしておったので、ついお前にきつく当たってしまったのだ。・・・わしはお前を信頼しておる。これからも、わしのために力を尽くしてくれ。・・・これはその詫びじゃ。」
そう言った後、董卓は金銀財宝を手にして、自ら呂布にそれを手渡した。
この董卓の言動に呂布は大変に驚いた。
というのも呂布は、「あ~あ、太師に怒られる・・・出仕するの嫌だな~・・・はぁ。」と罰を受ける覚悟で丞相府に来ていたからだ。
ところがぎっちょん。
彼は罰せられるどころか董卓から謝罪され、お詫びの印として財宝を渡されたのだ。
これはびっくり!アリエッティ!ということで呂布は大変に驚いたのであった。
そして、この董卓の言動は彼の心をより苦しめる形となっていた。
『董卓への恩と貂蝉への愛』
呂布はこの二つの板挟みとなってしまったのだ。
とはいえ、それをこの場で口に出すことなど出来るはずもなく、彼は、
「あ、ありがとうございます。今後は行動を慎みますので、昨日のことはお許し下され。」
と頭を下げ、体裁を整えるしかなかった。
それから数日後。
董卓の病はすっかり良くなったが、呂布の心の病は重くなっていた。
毎日鍛錬を行い、丞相府への出仕も欠かさなくなった彼であったが、彼は無口になっていた。
以前のような豪胆さは鳴りを潜め、どこか集中力が欠けている一面も見せ始めていた。
そんな日々が続いたある日のこと。
いつものように丞相府へと出仕した呂布は、丞相府での仕事を終えた後、董卓の目を盗んで後堂へと忍び込み、愛しの女性を探し回っていた。
(貂蝉!貂蝉!貂蝉!貂蝉!貂蝉!貂蝉!貂~~~蝉~~~!!)
貂蝉を思う呂布の心は爆発していた。
この数日間、彼は貂蝉のことを思わない日は一日たりともなかった。
「今までこれほど人を愛したことが自分にあっただろうか?」と自問自答するほど、彼は貂蝉に恋い焦がれていたのであった。
屋敷内を探し回っても貂蝉を見つけることが出来なかったので、呂布は庭園へと足を運んだ。
そして庭園を探索していると、庭園の奥にある蓮の池で囲まれた鳳儀亭という名の亭に1つの人影があるのが見えた。
呂布が彼方より目を凝らすと、その人影は彼が探し求めていた人物であった。
「ちょ、貂蝉!!」
鳳儀亭へと繋がる橋を渡る呂布。
貂蝉も呂布に気付いた様で、彼女は声を上げ、橋を渡る彼へと近づいた。
「将軍様!!」
そして2人は橋の上で抱き合った。
実に3度目の抱擁。
橋の下の水面では美しい蓮がゆらゆらと揺れており、それは彼らの胸中を表しているかのようであった。




