百四十.襄陽の戦い その四
最悪のタイミングで兵たちを休ませてしまったため、黄祖軍の陣営は混乱を極めていた。
8日目の夜、本当に夜襲を仕掛けた孫堅軍は、容易に上陸に成功して、黄祖軍の陣営を暴れ回っていたのであった。
「くそーーー!孫堅め!このタイミングで夜襲を仕掛けるとは!!・・・わしは何てついてないのだ!!」
自分の采配の運の無さに憤慨する黄祖。
そして彼だけでなく、彼の横にいた副将の張虎と陳生の両将も怒りを露わにしていた。
「黄祖様!私は激おこです!ぷんぷんです!奴らを一匹残さず抹殺したいです!!」
「俺もです!俺もです!・・・俺もです!・・・・・・・俺もです!!」
両将の怒りの叫びを聞いた黄祖は、「その心意気や良し!」と、2人を孫堅の本陣へと当たらせることにした。
黄祖の命令に喜び勇んで、2人は馬に乗って孫堅の本陣へと歩を進め、孫堅を大いに罵った。
「江東の腹黒いネズミめ!お前を夢の国に送ってやる!!」
「生命の先延ばしはさせない!腹黒いネズミの生命の権利は此処で断つ!!」
敵の2人の罵声を聞いた孫堅は、
「ハハッ!!私を討つなど50年早いわ。・・・いや、50年どころかエンドレスに私を討つことなど出来ないだろう。ハハッ!!・・・ってなわけで、誰か奴らを退治せよ。」
と、笑いながら傍にいた家臣たちを見渡して命令を下した。
すると1人の武将が名乗りを上げた。
「では、この『韓当』が奴等を仕留めましょう。」
孫堅の命令に名乗りを上げたのは韓当であった。
韓当は大刀を武器に、張虎へと一騎打ちを仕掛けた。
戦い始めて、三十合ほど打ち合うと、韓当が張虎を押し始めた。
その様子を見た陳生は「こりゃいかん!」と、張虎の助太刀に入ろうとした。
さらにその様子を見た孫堅の息子である孫策は、「父上。私があやつを殺ります。」と宣言して、弓を手に取り、陳生に向けて白い矢を放った。
ピュピュピュピューー!!と放たれた白い矢は陳生の胸に見事に刺さった。
「やられました!他に言うことは無し!死にます!無念!!」
そう言って陳生は落馬して死亡した。
それを見た孫堅は、「さすが我が子だ。」と、孫策の弓の腕前を褒めた。
そんな親子のなれ合いの最中に、韓当は張虎の一騎打ちに勝利。
張虎を見事に叩き斬っていた。
「敵将討ち取ったりーーー!!」
韓当の宣言により、黄祖は酷く狼狽して、全軍を鄧城へ退却させようとした。
しかし、そうはさせじと若武者孫策は槍を振り回して彼らを追いかけまわした。
孫策の活躍により黄祖軍は散々に打ちのめされてしまったが、彼らは命辛々、鄧城へと逃げ延びたのであった。




