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コミカル三国志(第一部)  作者: ダメ人間
第六章 謀略の荒野
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百三十.断るときはやんわりと

 劉備は盤河の戦いにおける功績を称えられ、平原の小役人から平原の相まで大出世した。

 その後、公孫瓚は劉備三兄弟の出世祝いと送別を兼ねた宴会を開いた。


 公孫瓚が開いた宴会は見事なモノであった。

 北方の御馳走で腹を満たし、美女の舞で目の保養をして、準備された大量の酒を浴びるように飲みほした。

 面白愉快なその宴会に、彼らは時間が経つのを忘れて楽しんだ。

 そして宴会が終わり、各々が自分の宿舎へと帰って行った後、劉備の宿舎に1人の男が訪ねてきた。


「劉備殿。こんな夜分遅くに失礼致す。趙雲でござる。」


 宿舎の扉越しに劉備に声をかけたのは趙雲であった。


「趙雲殿か。今、扉を開けるのでしばし待たれよ。」


 劉備は扉を開けて趙雲を宿舎へと招き入れた。


「やぁ趙雲殿。こんな時間にどうかなさいましたか?」


「実は・・・劉備殿にお願いがあって来た次第でござる。」


「お願い?私に出来ることなら何なりと。」


「・・・劉備殿。自分も平原へ連れて行って下さらぬか?この通りでござる。」


 趙雲は両膝を床につけて、劉備に懇願した。

 思いもよらぬ趙雲の行動と願いに劉備が驚いていると、趙雲は劉備からの返答を待たずに話を続けた。


「・・・劉備殿。ご存じの通り、拙者は、もとは袁紹の家来の者にございました。しかし、洛陽での袁紹のやり方を見るに、彼は将来の見えない愚かな人間に思えてしまい、彼の元を去り、公孫瓚の元に身を寄せました。」


「しかし、その公孫瓚も董卓の仲介を受けると、たちまち袁紹と和睦し、董卓に尻尾を振り始めました。」


「これでは彼の器の底も知れたもの。袁紹も公孫瓚も天下を救う人物の器とはとうてい思えませぬ。」


「しかし、あなたは違う。あなたは必ずや大功を成し遂げ、天下窮民を救う救世主になるとにらんでおります。」


「・・・劉備殿。拙者は劉備殿をお慕いしております。どうか拙者を家臣にして平原に連れて行って下さらぬか?・・・この通りでござる。」


 話を終えると、趙雲は地に頭がつきそうなまでに深々と頭を下げた。


 話を聞いた劉備は考え込んだ。

 気が合う人物だとは思っていたが、まさかここまで自分を信頼してくれているとは思ってもみなかったからだ。


 しばらく考えた後、劉備は趙雲に返答した。


「・・・趙雲殿。ありがとうございます。しかし、私はまだ何も成し遂げていません。それに自分が才ある人物とは私自身思っておりません。そんな私に仕えようとするのは時期尚早だと思われます。」


「けれど、将来、再会する機会がありましたら、その時は今日の誼(よしみ)(=親しみ)を温めましょう。」


「趙雲殿。それまでは公孫瓚殿を助けてやってください。」


 劉備は趙雲の願いをやんわりと断った。

 断られた趙雲は少し悲しげな表情を浮かべた後、こう宣言した。


「・・・劉備殿。再開する機会は必ず作らせて頂きます。ですので、その時は必ず、拙者を家臣に加えて下され。」


 そう宣言して趙雲は立ち上がり、劉備に一礼すると宿舎を後にした。



 明くる日、劉備たちは荷物をまとめて公孫瓚の陣営を発った。


 劉備は今日から平原の相である。


 苦節を重ね、ついに報われた劉備の未来がどうなるのか?


 それは神のみぞ知るというやつであろう。


 しかし、分かっていることが一つだけある。


 彼は生涯戦い続ける運命にあるということである。


第六章 完

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