百十九.忠臣であることは行動で示すこと
「ちょ~っとお待ちよ、韓馥様!!」と、袁紹との協力関係に異議を唱えたのは、耿武という役人であった。
「耿武か。・・・なぜお主は反対なのじゃ?」
「確かに袁紹殿が冀州に来て下されば、公孫瓚は手出しできなくなるでしょう。・・・しか~し!そうは問屋が卸しません!公孫瓚を追っ払った後、袁紹は恐らく冀州を乗っ取るつもりです!」
「・・・耿武よ。それは少し考えすぎでは?」
「いいえ!考えすぎではありません!!殿もご存じでしょう!何進に呼ばれて洛陽に入城した董卓がどのような行動を起こしたのかを!!」
耿武は董卓の洛陽乗っ取りを例に挙げて、袁紹との協力関係を止めるように韓馥を諌めたが、韓馥は聞く耳を持たなかった。
「はいはい。わかった、わかった。・・・他に反論がある者はいないか?」
「シーン」
「シーン」
「シーン」
「シーン」
「ムシーン」
「・・・他に反論は無しっと。・・・ってなわけで、耿武よ。袁紹殿と協力することになったので諦めろ。」
「そ、そんなぁ。・・・殿!考え直してください!」
耿武の願いも空しく、韓馥は「くどいっ!!」と、彼を一喝して、袁紹と協力関係を築くことにした。
諌めを聞きいれられず、憤慨した耿武は官職を捨て、泣きながら城を飛び出していった。
協力関係という名目を得た袁紹は、すぐに冀州領内へと軍を進めた。
(馬鹿だ・・・馬鹿すぎるぞ、韓馥よ。これで血を一滴も流すことなく、冀州を略奪できたぞ。)
袁紹は笑うのを堪えながら、馬車に乗って道中の景色を楽しんでいた。
冀州への街道を堂々と進む袁紹軍。
兵馬が通る道の辺の木の陰に1人の男が剣を持ち、袁紹が来るのを今か今かと待ちわびていた。
(ぶつぶつぶつ・・・死ね、袁紹・・・ぶつぶつぶつ・・・ご安心なされよ、殿・・・ぶつぶつぶつ。)
待ちわびている人物は耿武であった。
耿武は忠臣であった。
冀州と韓馥を護るために、命を懸けて袁紹を討とうと、街道で待ち構えていたのだ。
そんな覚悟を持つ耿武の目の前に、袁紹がさしかかろうとしていた。
耿武は剣を強く握りしめ、叫び声と共に袁紹の馬前に飛び出していった。
「袁紹!冀州にお前を」
「むっ!曲者!斬れ!!」
「はっ!!」
袁紹の護衛は、馬前に飛び出して来た耿武を背後から叩き斬った。
「えっ!? うそ・・・まだ口上も述べてないのにわしは斬られたのか・・・無念。」
そう言って耿武は最後の力を振り絞って、袁紹に向けて剣を放り投げようとした。・・・が、剣はあらぬ方向へ放り投げられ、周囲に生えていた柳の木へと突き刺さった。
「なんじゃったんじゃこやつは・・・まぁよい。周囲に警戒しつつ、韓馥の待つ城へと急ぐぞ。」
「御意!!」
その後、耿武のような刺客は現れず、袁紹は無事に韓馥の待つ城へと入城したのであった。




