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翌日、体重を測ると18kgになっていた。マスターは6kgになると読んでいたらしいが、違ったという。
そして彼はいつも通り、朝に薬を飲み、日中はデイトレードをして、夜の7時にシャッターを上げた。
「やっ、マスター」
「先生。今日は機嫌が良いな」
「実は今日は妻との珊瑚婚式でね」
「珊瑚婚式?」
「さんご、だけに結婚35周年のことだよ」
「そうだったのか。だったら今日は早く帰った方がいい」
「そのつもりだ。だがマスターとも話がしたいから、1時間だけ居座ることにするよ」
「そうか、それはすまないな」
「いいんだよ。それにさっき、妻のために買ったペアリングを、マスターにも見せたくてね」
「へー、どんなのだい」
「それよりも先にコーヒーをいただけるかな」
「ああ、分かった」
マスターはいつもと違い、少しワクワクしながらコーヒーを淹れ、先生に出した。
「それで、どんなペアリングを?」
「これだよ」
「おお、これはとても綺麗なダイヤの指輪だな」
「これが高くてね。2個で100万円以上したよ」
「奮発したな。さすがは先生だ」
「こんな炭素の塊に100万も払う私もどうかしているね」
「そんな浪漫のないことは言うなよ先生」
「ははっ、すまない」
そしてマスターは先生と1時間ほど話した後、先生に早く帰った方が良いと促した。
先生は今日も「ありがとう」と言って店を後にした。
先生が帰った後は誰も店に客が来なかったので、何事もなく閉店時間を迎えた。
マスターは店のシャッターを閉め、先生が使った食器を洗い、2階の自分の部屋でデイトレードをして過ごした。