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翌日、マスターの体重はまたも変わらず58kgだった。
昨日と同じように、起きてからすぐに薬を飲み、日中は株価を眺め、夜の7時にシャッターを上げる。
「こんばんは、マスター」
「どうした先生、やけに疲れた顔をしているな」
「今日は休みだから、地元の草野球チームに助っ人として呼ばれてね。全く、骨が折れたよ」
「それは大変だったな」
「今日は濃いのが飲みたいから、エスプレッソで頼むよ」
「分かった」
マスターは慣れた手つきでエスプレッソを専用の小さいカップに淹れ、先生に出した。
「先生っていくつなんだ」
「私はもう還暦を迎えているよ。古希まであと5年といったところか」
「そんな歳でよく野球なんて出来るな。尊敬する」
「だから今日、私よりも若い男が酸素缶を吸っていた時には、滑稽で笑ってしまったよ」
「それはそいつも大袈裟だな」
そしてまた、すぐに閉店時間が訪れた。昨日と同じように、先生はお金を払ってから「ありがとう」と言って店を後にした。
マスターは店のシャッターを閉め、先生が使った食器を洗い、2階の自分の部屋でデイトレードをして過ごした。
そして翌日、彼の体重は20kgになっていた。