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翌日、マスターの体重は変わらず58kgだった。
彼は起きてからすぐに薬を飲み、日中デイトレードをし、夜の7時になると店のシャッターを上げる。今日も先生は店に訪れた。
「やあ、マスター」
「先生、こんばんは」
「今日はコーヒーの他に、ハムサンドも貰えないかな。出来れば、ハムは一度フライパンで焼いてくれると嬉しいんだがね」
「わかった、すぐに出そう」
「すまないね」
マスターは冷蔵庫からハムを取り出し、それをフライパンで焼き始める。
「マスターのそのフライパンはフッ素樹脂かい?セラミックかい?」
「これはフッ素樹脂だな。セラミックは食材がくっ付くから焼きにくいんだよ」
「ははっ、うちの嫁さんと同じこと言ってらぁ」
ハムが焼き上がり、マスターはパンに焼きあがったハムに加えて、レタス、トマトを乗せ、マヨネーズをかけてからもう1枚のパンで挟んだ。
如何にもズボラであるが、先生はこれを美味しいと言ってくれるので問題ないという。
マスターは皿に乗せたハムサンドと、ハムを焼いている時に淹れていたコーヒーを手に、先生の元まで運んだ。
「お待たせしました」
「おお、これは美味そうだ」
「先生の体を気遣って、トマトは厚く切っておいた」
「おいおい、私がトマト嫌いなのを知っての狼藉か」
「そう言いながらも、いつも食ってくれるじゃないか」
「それは健康のためだよ」
そしてまた、すぐに閉店時間が訪れた。先生はお金を払ってから「ありがとう」と言って店を後にした。
マスターは店のシャッターを閉め、先生が使った食器を洗い、2階の自分の部屋でデイトレードをして過ごした。