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  作者: 一口太郎
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あるコーヒー屋のマスターは最近、体重が2kgほど痩せた。10日前までは、ずっと60kgを保っていたのだが、その翌日に起きて体重を量ってみると、急に1kgも痩せていたという。


いつも通り食事はとっていたし、野菜ばかり食べていたわけでも無い。ダイエットをしていたわけでも無い。


その痩せた日から5日が経ったとき、また1kg痩せたという。もちろん、食事は抜いていない。


ただ、彼は毎日欠かさず薬を飲んでいるという。その為の副作用だろうか。


あの2度目の減量から4日が経ち、男の体重は58kgのまま変わることは無かった。


男は今日もいつもどおり、自営業のコーヒー店のシャッターをあける。


立地はよくないし、夜の7時から11時までしか開けていないので、リピーター以外の客はあまり来てくれないが、副業のデイトレード稼いでいるのでちゃんと飯は食えているらしい。



「やあ、こんばんはマスター」


「先生。今日も来てくれたのか」


「マスターのコーヒーは、ドラッグよりも依存しやすいからね」


「ははっ、すべて合法なモノで挽いているから安心してくれ」


「分かっているさ」



早速訪れたこの客は、3、4ヶ月前から毎日訪れるようになった常連の客だった。


どうやら大学の教授をしているらしく、いつも白衣を着ているあたり、科学系の研究をしていると見当がつく。


無精ヒゲをこれでもか生やしており、一見すると変わった人だが、マスターは彼との当たり障りない会話を気に入っていた。



「先生、コーヒーでいいかい」


「ああ、頼むよ」


「最近、どうも痩せたみたいでね」


「そうかい?あまり変わっていないように見えるよ」


「だと良いんだがね」



マスターは雑貨屋さんで買った胡散臭いカップにコーヒーを淹れ、先生に出した。



「うーん、やっぱりマスターのコーヒーは香りが良いねぇ」


「新しく入った金の豆ってブランドなんだ。そう言ってくれるとありがたいよ」


「店頭のネオンサインは伊達じゃないね」


「あのネオンサイン、胡散臭いけどな」



マスターと先生のくだらない話は毎日のように続き、あっという間に閉店時間の11時が訪れてしまうのだった。


こういうことは今日に限らず、いつもの事なのでマスターは今さら何とも思わなかった。


閉店時間になるとその先生は、会計を済ませて「ありがとう」と一言告げて店を出ていった。


先生が帰った後、マスターは店のシャッターを閉め、胡散臭いカップを洗ってから、店の2階にある自分の部屋で副業をこなす。


彼は開店時間以外はこうやって、常に株価とにらめっこしているのだ。笑ってしまうほど儲かることはあまり無いらしい。





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