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画期的(?)スカウト方法

今回は御一行に外遊びをさせてみましょう

『きゃーーーーーー!!!』


 人の往来の激しい大通りのど真ん中、ものすごい人数で形成された歓喜の声が、俺・・・・・・いや、俺達の目の前で起こっている。


「こ、これは・・・・・・」

「これって・・・・・・」

「あ~、これって・・・・・・」


 それを見て、俺・メリルさん・マホの3人が気まずそうに顔をひきつらせる。


 相当の人の目を引く大人数の集団は何かを囲むようにして大通りを横断していて、正直言って・・・・・・その~・・・・・・


「チョ~邪魔くさい」

「ライナ、そんなこと言ったらダメでしょ」


 そうだよ!俺が言おうとしたんだから。

 え、何か間違えたこと言った?ソンナバカナ~♪


 まあそれは置いといて、なぜこんなことになったのか。

 後から起きて朝食を食べ終わったメリルさんが俺をまさかのデ――――――


「回想を妄想に転換しない」


 すんませんマホさん、ちょっと調子乗った。


 改めて、なんというか・・・・・・お出かけに誘われました。

 理由は気分転換と記憶の手掛かり探しとのこと。

 っていうか、記憶喪失設定まだ続いてたのか!罪悪感あったはずなのに忘れたよ!

 けどこれはメリルさんの厚意に甘えて、行くことにした。なぜかライナとマホも込みで。

 いや、マホは《憑依》という名のナビゲーターだし、他の人には見えないからいいとして・・・・・・

 て、思って訊いてみたら足払いされました。

 正直素早すぎて見えなかったその足払いには驚いた。その時俺は、恐らく彼女は、いや、彼女たち(・・)は冒険者なんだろうと察した。

 実際俺が不意打ちで引っかかっただけだと思うけど。


 まあ、そんな発見と格闘術があった中、


『きゃーーーーーー!!!』


 叫び声(うん、もはや叫び声)の集合体が目の前にやってきたというわけで、ライナの言葉せいかくを借りると・・・・・・チョ~ウザイ。


「でも、なんなんだこれ?」


 その光景を棒立ちで見ながらポツリと言ってみる。

 よく見ると、その集団は女性人がほとんどらしく、さらによく見ると、その中心には男がいた。整った顔立ちに似合う栗色の髪に青い目は、確かに女という女をひきつけるものがあるのだろう。じゃあこれって、もしかして・・・・・・


「アイドルかなんかってことか?」

「その通り、とだけ言っておくわ」


 また独り言のように結論を言ってみると、ライナが返答してきた。どうやら彼女も知っている人らしい。


「ハルマ・クォーター。冒険者屈指のイケメンで、王都はもちろん、多数の雑誌に載せられるほど。職業・使うスキル・実力なんかは全て秘密にされていて、本気を出した姿を見たものは誰もいないっていういわゆる・・・・・・」

「カッコつけだけのモテ男ってことか?」

「・・・・・・・・・・・・」


 はっ!思わず本音を・・・・・・って思ったら、ライナが黙ってしまった。

 もしかして彼女もファンだったりするのか、と思ったら。


「あなたと会って初めて意見があったわ」


 笑顔でそんな事を言った。

 あ~なるほど。ジャストミィーーート!ってことね。


「俺達、意外に気が合うらしいな?」

「ああ、安心して。それはないから」

「えっ?でもさっき・・・・・・」

「意見はあったけど気は合わないから、安心して」


 その後のノリで訊いてみたが、倍にして返してきた。主に毒素を。

 しかも一体何を安心するんだろう?どくどく攻撃食らったっていうのに。


「けど、そんな人がなんでこんなとこにいるんだ?」

「そりゃ当然、ここを本拠地にしているから・・・・・・」


 素朴な疑問に珍しくライナが答えたところで、メリルさんが手をぽんと叩く。


「そうだ!ユウ君、ちょっと着いてきてもらえるかな?」

「え?でも・・・・・・ちょ、メリルさん!?」


 否応なしにメリルさんに手を引かれ、集団を回り込むようにして走り出した。

 それに続いて、ライナとマホも駆け出す。






          ◆



 着いたのは都市部から少し離れた人通りの少ない場所だった。

 そして俺達の目の前には、


「ええっと、これは・・・・・・?」


 首がつかれるくらいに高く、巨大な建物がそびえていた。

 壁の表面は真っ白に塗られ、ステンドグラスがはめ込まれた窓と組み合わせたそれは、周りの風景からみると少し浮いた存在感を放っていた。


「中に入ってからのお楽しみ♪」


 そういってなぜか上機嫌なメリルさんはスキップしそうな足取りで中へと入っていく。

 そんな様子に違和感を持つことなく、ライナもマホも入って行ったので、取り残されないように恐る恐る着いていってみる。



 メリルさんがドアを押しあけると、大音量のパイプオルガンの音が・・・・・・なるほど、ここ教会なのか。

 え、外側見ればわかるって?そういえばそうだったね!(棒読み)


「メジットさ~ん!いませんか~?」


 全員が入ってしばらくすると、メリルさんが大声で名前を呼ぶ。

 けど・・・・・・


「・・・・・・あれ?誰もいな――――――」

「呼んだかな?」

「んぎゃーーーーー!!!???」


 後ろ振り向いた瞬間に目の前にじいさんが現れた。

 いや、怖っ!てか近っ!!


「ああ、そこにいたんですね」


 え、驚かないのメリルさん!?死角から眼前に迫るとかもはや貞○でしょ!?


「あ、これは失礼。私、メジット・クディース・ベーンと申します。ここの神父を務めさせております」


 俺を見るなり頭を下げてきた初老の男性は黒いローブのようなものを身に纏い、金のネックレスをいくつも首に下げている俺のイメージ通りというか、まあそんな人だ。けど俺は、


「あ、あああああ~~~ななななるほ~ど・・・・・・」

「どんだけビビってるのよ」


 逆に初見で驚くなと?無茶あるよ~(泣)


「それで本日は何の御用で?」

「ええ、実は彼に《開眼》させたいんですが・・・・・・」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハイ?


「なるほど、承知しました」

「あの、ちょっと待って下さい。カイガンって何のことですか?」


 慌てて2人の会話を中断させ、神父のメジットさんに訊いてみる。


「おや?ご存じないのですか?」


 メジットさんは少し驚いたような表情で俺を見た後、ライナとメリルさんに視線を向けると「まあ、ちょっと色々事情がありまして」と茶を濁した反応を示された。


「そうですか、ではご説明いたしましょう」


 曖昧な反応を気にすることなく、メジットさんが語りだす。



 この世界では冒険者と一般人との間で、能力的な差がある。その原因は今出た《開眼》というものが原因らしい。

 仕組みについては、文字通り自身の中に眠っていた力を目覚めさせることにより、個人差はあるが身体能力の急激な向上はもちろんのこと、人によっては魔法を駆使することができるという。


 ちなみに、この世界に決まった「属性」はない。自然に干渉できる全てのものが属性と呼ばれ、木や水、さらには空にある雲さえも操る者さえいるが、どんなに特異な魔法の素養を持った人間でも2つか3つまでが限界らしい。


「――――――そしてその《開眼》を行えるのが神に仕えるものなのです」

「・・・・・・それって、女神とかもですか?」


 思わず訊いてしまったが、メジットさんは笑顔で頷いた。

 な~る。ということは・・・・・・


『お前もできるってことなのか?』

「フッ、ま~ね♪」


 ウゼェ・・・・・・訊かなきゃよかった。


「しかし神々が直接行うことは滅多に無く、逆にそれを受けた者を【信託者】と呼ばれております」

「ほへ~・・・・・・」


 じゃあそれを基本行う人は・・・・・・?


「私です」

「ふぁお!?」


 出た貞○ーー!!

 いつの間に背後に人がいました!

 またかよ!とツッコミたかったけど逆にホラー過ぎてビビったよ。


「って、この人って・・・・・・」

「そう。さっきパイプオルガンを弾いてたイデアさん。この辺りで唯一《開眼》をさせられる人だよ」


 急に冷静になった自分にも驚きながらメリルさんが説明すると、修道服姿のイデアさんは深々と頭を下げた。

 このあたりで唯一ってことは、《開眼》をさせられることができる人間はそうそういないってことか。

 そんな推測を立てながら考えていると、メリルさんが少々真剣な眼差しでこちらを見る。


「ユウ君。あなたの意見を気にせずここまで連れてきちゃったのは申し訳ないんだけれど、もし良ければ、冒険者になってみない?」

「ぼ、ぼうけんしゃ・・・・・・?」


 いきなり出てきた想像上だけのはずの単語。

 魔物を倒し、様々な魔法やスキルを駆使して高みへと目指したり平和を維持することを志す代わり、最悪命を落とすであろう職業。

 しかしその単語はとても魅力的と感じる自分があり、危険が伴うということをすぐに察知し警告する自分もいる。けど、



 何で今そんな事を訊きだすんですか?



 そう言いたかったのに、言えなかった。

 やけに真剣すぎるメリルさんの目と、なぜか目を逸らして俯くライナ、そしてイデアさんに「シーッ!今話しかけると浮いて見えるから静かにしててっ!」と注意しているマホ。


「いやいやいやいや、十分浮いてるぞ?」

「えっ?」


 マホに突っ込んだらメリルさんに反応されてしまった。


「あ、えーと、こちらのことです」

「そ、そう・・・・・・」


 さすがにメリルさんに苦笑いされた。

 危ね~、取り繕わなかったら「何やってるのか、この変人は」みたいな視線が来るところだった・・・・・・


 主にライナさんから。


「・・・・・・分かりました。やります」

「え!ホント!?」


 俺が頷くと、メリルさんが表情を明るくして近づいてきた。

 心底嬉しそうなリアクションの最中に誠に申し訳ありませんが、密着しそうになるからそれ以上は接近しないでください姉御メリルさん


「・・・・・・でも、何でいきなりOKしてくれたの?」


 そろそろ精神学上、高校生には決してよろしくはない距離まで接近してきたところで、ライナの一言によってメリルさんが足を止めた。

 ライナ、ナイス!視線は相変わらず怖ぇけど。


「ん~何ていうか、やらなきゃなんか後悔しそうだと思って。それに・・・・・・」

「それに?」


 メリルさんの上目遣いにKOされそうだからです!


 なんて言える訳ないよね~、もはやそれってま~ぼ~ろ~し~。


「今のあんた、結構キショイよ?」


 うっせー!お前がいきなりGOサイン送ったから思わず口走ってしまった言い訳考えてんだろうがっ!


「まあ、また別の機会に話しますよ」


 とりあえずその場しのぎに言ってごまかし、イデアさんに《開眼》をしてもらうように頼んだ。


「別に構いませんが、これを行うと二度と普通の人として・・・・・・」

「承知の上です」


 彼女が言い終えるのを待たずに催促するように返事すると、諦めたように目を閉じ呪文を唱え始めた。


 そして俺の額に彼女の指が触れた瞬間、



 さっき入ってきたドアの方へと吹き飛ばされた。

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