読みづらく、壊しにくい空気
少々ネタにつまりが出てしまった今日この頃ですw
頭の中整理しないと・・・・・・
翌日。
ベッドから体を起こし、大きく伸びをしてみる。
「・・・・・・うん。痛みはないな」
体の箇所を確認してから肩を回す。
1日中寝てたが体のだるさはない。まぁ、あんなに暴れまわってたんだからな。
本当にサイレント芸人できるんじゃないか、俺?
「う~ん・・・・・・おはよう・・・・・・」
すると、どこからともなくマホの声が聞こえた。
きょろきょろと周りを見渡すがどこにも居ない。
「あ~、こっちこっち~」
また声が聞こえた、次はさっきより近いように思える。まるで真上から声をかけられているような・・・・・・
「ま、まさか・・・・・・・・・・・・」
俺はギギギ、とぜんまい仕掛けの人形のように上を向く。
するとどうだろうか、
頭上で眠気まなこを擦りながら天井に足をついて立っているマホがいた。
「ぬぁ――――――――――――」
「叫ぼうとするなバカ」
「ごはっ!」
思わず悲鳴を上げそうになった俺の顔面に重力無視の飛び蹴りが炸裂。
逆にあの体勢からどうやって蹴ったんだ?
マホはそのまま優雅に本来の床に着地すると、大きくため息をついた。
「全く、あなたこの部屋以外にもヒトがいることくらいも分からないの?」
「イテテテ・・・・・・いること分かっても叫びたい光景だったと思えよ」
顔を抑えながら反抗する。
誰だってあんな光景見たら叫びたくなる。
俺なんかいること分かっても叫んじまうよ。もう叫んでるけど。
「そういや今何時だ?ここ時計ないから把握できなくって」
寝覚めの最悪な朝を迎えた俺は、マホに時間を訊いた。
「しょうがないな~・・・・・・今、7時手前。2人はまだ寝てる時間だと思うよ」
ヤレヤレ、と肩をすくめるも教えてくれるマホ。いちいち一言が余計だけど、今回は無視した。
説明し忘れていたが、この世界の時間、及び暦などは俺の元いた世界の太陽暦と同じで、1日24時間1年365日で形成されている。
ただ違うところといえば、時計はすべてローマ数字に似たもので表すことが義務付けられていることくらいだろうか。
理由は詳しくは分からなかったが、魔法の現象と何らかの関係性があるようだ。それはそれでカッコイイと思ったからいいけど。
と、説明しているうちに着替えを終わらせた。
ちなみに、この服はメリルさんが出掛け先に買ってきてくれたものだ。
黒のカットソーに白と黒のチェック柄のブルゾン、紺のカーゴパンツという外出用として使いそうな組み合わせだ。
けど、俺にとっては結構好みだ。メリルさんのファッションセンスに感謝感謝です。
「なぁ、どうだ?似合うか?」
マホのいる方へと振り返りながら声をかける。
彼女は窓の外にいる鳥達と戯れていたが、俺の姿を見るなり、
「何ソレ、キモイ、マニアック過ぎ」
腐敗したものを見るような目で毒づいてきた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
訊かなきゃよかった。
「あ~、本気にしないでよ。多分似合うから」
「なるほど、さいですか」
マホに気分を害されたが、気を取り直してドアノブをひねる。
ゆっくりと押し開けると、真正面に階段が見えた。あそこから2階に続くのだろう。
左右を見ると、左側に玄関、右側に部屋がある。
家の中の様子はあらかじめメリルさんから教えてもらっている。 確か右側の部屋はリビングだったはずだ。
記憶を頼りにその部屋のドアを開ける。
部屋の中は真っ暗で、カーテンから差す陽の光が線を引いている。
俺はそのカーテンを両側におもいっきり開く。
すると、外の世界が視界いっぱいに広がってきた。
木々が葉を揺らし、鳥が枝の上で歌をさえずる様子も見える。
地面にはふかふかの芝生が生えて、昼寝をするにはさぞかし気持ちが良いだろう・・・・・・
「・・・・・・って、ここ庭じゃん」
少しだけ見回した直後にツッコミを入れてしまった。街の様子が分かるかも、と思って期待していただけにちょっとショックだった。
しかし、普通の1軒屋にしては十分立派な庭だ。
小さなブランコやテーブルなんかを置いても十分なスペースがある。
あの姉妹はそれなりのお嬢様なのかもしれない。そう思うと、受け入れてくれたことへのありがたさがこみ上げてくる。
「・・・・・・っと、こうしていられない」
自分のやるべき仕事を思い出し、部屋の方へと振り返ってみる。
20帖近くの広いリビングの中で一番最初に視線に入ったのは、一番奥にあるダイニングキッチンだった。
この家ではカウンターキッチンになっているらしく、台所のすぐ手前に一枚板で作られたらしいテーブルと一般的な椅子が4人分置いてあった。
リビングは綺麗に整っているだけでなく、個性的に飾られているように見えた。
淡いベージュ色のソファーにもピンクや水色のクッションが乗せられ、俺の近くにはテレビ(らしきもの)がある。なんともファンタジーからかけ離れている気もするけど、まあいっか。
ここで家族みんなでテレビ見て楽しんでるんだろうな・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・家族?」
ここで、あることに気がついた。というか忘れていた。
あの2人の親に会っていない。
そういえば、全然考えていなかった。
彼女たちにも親はいる。そんなこと、考えてみれば当然のことだ。
何も言わずに勝手に寝泊まりしてしまっていたが、親への了承はもらえていたのか?
もし反抗されていたけど忘れられてた、みたいなことになってたる状態で見つかったらタダ事じゃないはずだ。
「やっべ~、どうしよ・・・・・・」
そんなことを考えていたら、ちょっと焦りが出てきてしまった。
彼女たちは何も言わずにOK出してたけど本当に大丈夫なのかな~
「親なら居ないよ」
俺があれこれ考えていた頃にマホの声が聞こえた。
入口の方を見ると、マホがドアに手をかけて立っていた。
どうやら独り事が聞こえていたのだろう。
「あの2人の親はいないの。父親はメリルが生まれる前から離婚して、産んだ母親はしばらくして事故で亡くなったのよ」
「・・・・・・・・・・・・」
さらっと言い切ったマホ。その内容はとてつもなく重いものだった。
話に出てきたとある単語に思わずピクッと反応してしまったが、彼女は気づくことなく先を話す。
元々、テラ夫妻――――――つまりメリルさんとライナの両親だ――――――は一流の剣士と領主の令嬢という関係で、父親が彼女の家での護衛を務めていたのが始まりだったらしい。
その時2人はお互いに一目惚れ。いわゆる「運命の出会い」という名のハンマー担いだデブの天使にぶん殴られたわけだ。
それからというもの、令嬢は護衛をその剣士に名指しで依頼し、剣士は依頼された時間の間、彼女から片時も離れずに付き添っていたとのこと。そんな日々を3年間も続いたらしい。
全くご苦労なことで・・・・・・
そして令嬢の両親が他界し、遺産を全て引き継いだ彼女は、結婚適齢期になった途端にあっという間に剣士と結婚――――――永遠の愛を誓ったという。
しかし、そんな人生が「永遠」に続ことはなかったという。
やがて最初の命を自分のお腹に宿すようになり全てが順風満帆といったある頃、父親になるはずの夫が突然離婚し、所持金全てを妻に渡して姿を消したという。
「一体何で?」
「・・・・・・分からない。でもその後、夫が死体として発見されたそうよ」
目を逸らして答えるマホ。その目は同情しているというより、自分のことのように思っている風に見えた。
「じゃあそのショックで母親も?」
「・・・・・・」
「それとも、別の理由が?」
「・・・・・・」
続けざまに聞いてみたが、マホは目を逸らしたまま答えない。これ以上問い質すのも失礼と思ってゆっくりとキッチンの方へと向かう。
ただ朝飯作るためだからだけど・・・・・・
◆
「ふぁ・・・・・・ふ。おは――――――ようっ!?」
「朝っぱらから凄いリアクションだな」
大きなあくびをしながら入ってきた寝間着姿のライナが驚いた表情をする。なんか俺を見て驚いてた気がするけど、気にしない。
「あ、あなた、ケガは?」
あ、そのこと気にしてたのか。
昨日まで凄く冷たく当たられていたから、こういう反応は意外だった。
「おかげさまで、もう大丈夫だ」
「そ、そう・・・・・・」
笑顔を向けて答えると、彼女は何度か頷いてテーブルの上に目を留めた。
まぁ、普通は俺よりも最初に気付くべきことなんだけどね。
「ええっと、じゃあ、これはあなたが・・・・・・?」
「ああ」
別に気取ることなく返事を返す。
「あなた、これって・・・・・・」
彼女が恐る恐る指差すテーブルの上には、大量の料理が並べられていた。
この世界で主食とされているパンに目玉焼きと野菜のお浸しやコーンスープまで付いてて、自分でもおいしそうに見える。
けど、問題はそこじゃない。
「あ~、やっぱり作りすぎたか?」
「当然よっ!」
俺はソファーの下に座ってその様子を見ながら訊いてみると、予想通りの答えが返ってきた。
ちなみにレシピはライナが俺に渡した教科書の一つ「おうちでお手伝い!料理編」に載っていたものをそのままやってみたのだが、書いてある分量が4人前だったことに気付かずでそのまま実行してしまった。
でもマホがいるじゃないか!と思ったが、忘れていた―――――彼女たちは女神が見えないってこと。
「でもこれ、本当に全部あなたが作ったの?」
改めてライナが俺に訊いてくるので、とりあえず正直に頷く。
料理は調理実習以来やったことはないけど、しっかり味見ぐらいはした。ダイジョーブ!食って卒倒はないはずだから!
「――――――あ、そういえばメリルさんは?」
「まだ寝てる。ちょっと外で色々あったから」
「そか・・・・・・」
俺が曖昧に頷いてテーブルに目を落とし、それを聞いたライナが椅子に座ってから一切の会話が無くなってしまった。
「・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
空気って凄いね!お互いに黙っているだけで心臓が破裂しそうになるんだよ!
「な~に白けちゃってるんだか・・・・・・」
お前が言うなっ!とマホに言いたいが、言ったら言ったでライナからの視線が半端ないことは明白だ。
だ・か・ら!「えっ?私のせい!?」みたいなジェスチャーするな!
こいつがシリアスな話持ってきたせいで無暗に話しかけられなくなってしまったので、俺はいつの間に隣に来ているマホをにらみつける。
「・・・・・・ねぇ」
「えっ?あ、ふぁい?」
いきなりライナに話しかけられて、妙な返事をしてしまったが、そんなことにも気にせずこっちを見てくる。
「あなたは食べないの?」
「え?あ、ああ。えーと・・・・・・」
彼女の誘いに一瞬驚いたが、少し冷静に思い返した。
自分が事実を知っているが彼女はそのことを知らない、だからこんな誘いが出来るのだ。逆に俺が知っているのが発覚されたら色々とまずいし、雰囲気はもっと悪くなるだろう。
だから、今できることは・・・・・・
「い、いただきます」
そ~っとライナの向かい側のいすに向かって歩いた。
ユウスケ君の心中が絶賛錯乱中ですw
そんな彼にどうか救いの突っ込みを!