武器庫そして精霊
一目で高いとわかるようなカーテンの隙間から日射しが射し込み夕奈の顔を照らした。
「…ぅむ…」
夕奈はそれに顔をしかめ寝返りをうち、目をゆっくりと開けた。
「ふぇ…」
そこにはドアップのシャオの顔があったのだ。
男とも女ともとれるその顔に夕奈は顔を赤くしてシャオを殴った。
「ぐはっ」
クリスタルドラゴンぐらいならほぼ無傷で倒せるようになったシャオでも寝てる時の攻撃はかわせない。
諸に顔面パンチをもらったシャオはベッドから派手に転げ落ち床でのたうち回った。
「な、何すんだ…」
回復魔法をかけながら立ち上がるとシャオはベッドに腰をおろした。
「だって…その…恥ずかしかったから…」
「自分が一緒に寝たいって言ったんだろうが」
シャオはガシガシと自分の頭をかき夕奈の頭を撫でた。
「一人にして悪かったな…」
「…うん」
「まぁお前があっちに戻るまでは一緒だからな」
夕奈は撫でているシャオの手を振り払って腕にしがみついた。
「やだ…ずっと一緒がいい」
「と言ってもな…」
「…意地でも連れて帰るもん」
「そーだな、そうしてくれ」
シャオはそう言って立ち上がったのだが腕に夕奈がしがみついていたのでバランスを崩し倒れてしまった。
何故か夕奈を押し倒す体制で
そして悪魔の足音が近づく。
コンコン
「夕奈様、お食事の用意が出来ましたので……夕奈様?」
返事がすぐなかったことと何より部屋に夕奈以外の魔力があることに気づいたサラは無礼を承知で部屋の中に無理矢理押し入った。
勢いよく開かれるドア、そして入ってくるサラ。
目の前には夕奈を押し倒しているシャオ。
シャオはこの瞬間全てを悟った―――俺、死んだな――と
―――――――――――
「最近回復魔法かける頻度が増してる気がする」
サラに一方的に鞘で殴られできた傷を魔法で治しながら呟いた。
サラはシャオが夕奈を押し倒しているのを確認したその瞬間顔を真っ赤にしてシャオを殴りにかかったのだ。
夕奈が慌てて止めたときにはシャオは既にボロボロになっていた。
現在目の前に顔を赤くして怒っているサラがいるのだが昨日のような殺気はたっておらずチラチラとシャオを見たり夕奈の胸を見てから自分の胸を見て落ち込んだりとシャオにとって訳のわからない行動をとっていた。
しかし夕奈にはその行動の意味を悟りシャオの腕に抱きついた。
白波夕十の時は実の兄妹だったので自重していたが今は血の繋がりもないので歯止めがきかなくなっている。
その様子を見てサラはむっとし夕奈は勝ち誇った目でサラを見た。
ここに戦の火蓋が切って落とされたのだがシャオが知るわけもなく首をかしげていた。
因みにサラは自分より強い人が好みであり、昨日圧倒的に勝利を決めたシャオに惚れたのだ。
しかも自分が最も得意とする炎の魔法を同じ系統の魔法で撃ち破られたのだからもう激惚れである。
「…何睨みあってんの?」
シャオの疑問に答えるものは誰もいなかった。
――――――――――
朝の食事も終えてリーナ、サラ、奏八、夕奈、シャオの五人は城の武器庫に来ていた。
その中には歴代の勇者や勇者が倒した魔王の武器やら沢山の強力な武器が納められていた。
「ここからこれだ!と思う武器を選んでください。」
リーナと奏八、夕奈は武器庫の中に進んだがサラはその場に待機していた。
シャオは何故入らないのか聞いてみた
「サラは入らないのか?」
「入らないのではなくて入れないんだよ」
「入れない?」
「この武器庫には選ばれし者しか入れない、だから勇者の二人とこの国の姫にして神のご加護のあるリーナ様しか入れないんだ」
シャオは腕組みをしたあと武器庫に入った。
サラはびっくりしたが後を追うことも出来ずその場に立ち尽くすばかりであった。
対するシャオはこの中の武器を何個かかっさらってリヘルやキレヒのお土産にしようと考えたのだ。
もし城の者に止められたとしても盗めばいいやと思っていた。
中に入り武器を物色しようとしたらリーナが驚きの声をあげた。
「な、何故シャオ様がここに…」
「いや、普通に入れたぞ?」
「で、でもここは選ばれし者しか…」
「なら俺も選ばれし者だな」
会話を適当に打ち切り物色を開始した。
どれも強力な武器には違いないのだがシャオが使っている“夜桜”には到底及ばないものばかりであった。
“夜桜”はシャオの記憶から創り出したものでこの世界にはない刀だ。
それでも一応一般的には強力なものなので役に立ちそうなものは転移でリヘルの部屋に送った。
幸いリーナにはバレていないようだった。
武器庫といってもかなりの広さがあり全部みるのは大変だったので魔法を使シャオから見て業物を探した。
五つ見つかった。
一つはリーナが既に使っている杖で一つはシャオの“夜桜”、一つは夕奈のもつ槍で一つは奏八がもつ短剣、そして部屋の隅にあった白い棒だった。
全てに精霊が備わっていた。
まぁシャオや神の加護をもっているリーナにしか認識出来ないが
いや、もしかすると勇者の二人は認識できるかもしれない。
シャオは白い棒に近づき持ちあげた。
「我ソナタの新しき主なり、姿を現せ」
普通は人間が頼み込んでまたは精霊が人間を気に入り契約を開始するのだがシャオは契約してやるから出てこいやと言った。
すぐに固有結界が張られシャオは契約の場に意識だけ飛ばされた。
この結界の中では時間は止まっている上に外からの干渉を一切受けない。
「人間、その態度は…いや、人間にも劣る猫耳族ではないか」
クククと目の前に現れた白髪の少年が笑った。
シャオは気にせずその少年に近づいた。
「おい、白髪」
「し、白髪!?貴様、下級の魔物の分際で余にたしいして何を…!無礼であるぞ!」
「ハァ…」
シャオはため息をついた。
それをどう勘違いしたのかニヤリと笑い告げた
「そもそも貴様のような下等生物が余と会話、否、余を見ることすら出来ないのだぞ」
シャオはそもそも貴様の時点で話を聞いておらず精霊を斬れる武器を昨日サラと戦ったときに使った異空間から選んでいた。
そしてギリギリ目の前の精霊を消せない程度の槍を転移させ呼び出した。
「ハハハッそんな槍で余を貫こ「ちと黙れ」いたぁあああああ!?」
シャオは台詞の途中で不意打ちをした。
少年は結構上位の精霊なのだが生まれたばかりで武術はからっきしでありシャオの不意打ちをかわすことができなかった。
シャオは槍を抜くと再び刺した
「おら、どっちが上か理解したかガキ」
物凄い棒読みであったが自分の腹に刺さっている槍とその殺気で充分であった。
因みにシャオはこちらに来てから6年しかたっていないのでシャオもガキなのだが前世の記憶があるためガキでもない。
少年が首を取れるのではないかというぐらい縦にブンブン振っていると黒い光が人形を型どり一人の少女が現れた。
「なんだ?出てきたのか?」
シャオはその少女に話しかける。
その少女はヒラヒラの黒い服を着ておりシャオ、白波夕十がいた世界でいう“ごすろり”というやつだ。
漆黒の艶やかな髪は地面に届きそうなぐらい長く、そのわりには毛先まで手入れがとどいている。
そしてその漆黒の髪とは対照的な純白で粉雪のような肌、触れれば壊れてしまいそうな華奢な体。
一番特徴的なのは目だ。
紅く禍々しい光を放っている、それでいて綺麗な魅力的な目をしていた。
「うむ、主にたてついたのは気にくわぬが一応は妾と同種の精霊じゃて、可哀想になっての。止めにきたのじゃ」
「あっそ…って同種?黒のか?」
シャオは少年から少女、黒に目線を変え問う。
「うむ」
「まさかここにきて“カラー”に会うとは」
“カラー”とは精霊の種類のことで精霊王デセル自ら創り出した精霊で精霊王を除いて最強と呼ばれている精霊達だ。
赤と青と緑と黄と金と銀と黒と白というように色で区別される。
そしてもう一つの特徴が常に何かに憑依していることだ。
シャオの“夜桜”にはシュヴァルツが憑いている。
そして目の前にいるのが
「無色じゃろうな」
「は?無色?そんなのいたか?」
実際存在はしなかった。
しかし勇者召喚とともにデセルが創り出した新たな“カラー”。
それが無色だ。
「それにしても無色で星かよ…デセルさん絶体に適当だ」
シャオはそう呟いて固有結界をぶち壊し外に出た。
瞬間元に戻る時間が戻った。
『どうするのじゃ主よ』
『無色か?契約はせずに持ってくよ。常に“夜桜”使ってたら目立ちまくりだしそろそろサブウェポンが欲しかったんだ』
『サブウェポンと言うわりには強すぎるのう』
黒は苦笑した。
今行っているのは念話と言いある特定した人物と脳内で会話する魔法だ。
捕捉程度だが無色が憑依した武器一つあれば使い手によれば国が一つ崩壊する。
これも捕捉だが黒の憑依した“夜桜”をシャオがリミッターを外し本気で振るえば世界が危ない。
そうこうしているうちに夕奈と奏八が契約を終えていたのでリーナを筆頭に武器庫から出てサラと合流した。
「サラ、訓練所の準備は?」
「はい、出来ています」
「では行きましょうか」
シャオ達五人は武器庫を後にし訓練所を目指した。
登場人物を増やしすぎた気がする。
どう処理しようか…
うーむ、困った