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まきこまれ系猫  作者: ゼタ
一章 勇者召喚と勇者の成長
5/7

食事そして再会

「「祖の神、アルレラントに感謝を…ギフト」」


リーナとサラはナブールでの食事前の挨拶をした。

右手を左胸にあて左手を高々と上げる。

左手には魔方陣が現れそこから魔力が一定量飛んでいった。

これは人間の間で行われているもので魔法を使うときに神を通して使うので常に神に感謝をしているというのを神に伝えるためにこうして一日三回見返りを求めず魔力を捧げるのだ。


「…いただきます」


シャオは人間でもないし自分で魔法を使っているので感謝もせず普通に食べ始めた。

それをサラは睨むがリーナに止められた。


「「いただきます」」


勇者の二人は戸惑いながらもいつもどおりにした。


「…うまい」


シャオは目の前のステーキを口に含み呟いた。

推測するにこれはゴルネットという豚型の魔物の肉なのだがシャオの知らない味付けだったので感動した。

それにゴルネットの肉は硬く噛みきるのに苦労するのだがこのステーキはとろけるように口のなかでほどけた。

他の料理もおいしく他の四人が雑談をしているのにも関わらずシャオは黙々と料理をたいらげていった。

しばらくしてデザートが運ばれてきた。

パフェ的なもので色々な果物が散りばめられている。

その中にはリンゴの形をしたパイナップル味の果物があった。

シャオはそう言えば夕奈はパイナップル食えなかったなぁと思いながら夕奈の方を見るとちょうどそれを口に含もうとしていた。

シャオはそれを見て小声で慌てて止めた


「それ、パイナップルの味するから」


「え…?」


夕奈は何故自分がパイナップルが嫌いなことを知っているのか聞きたかったがシャオがパフェに集中しているのでやめた。

数分で夕奈はパフェを完食した。

するとシャオが夕奈の方を向き懐から取り出したハンカチで夕奈の口元のクリームを拭いた。


「たっく、いつも気を付けろと…」


ここでシャオは生前のように振る舞っていることに気がついた。

まずい、バレる。いや、でも姿も違うしバレるわけがないかと自己解決してシャオはハンカチを慌てて懐に戻し平然と正面を向こうとした。

しかし夕奈の手によって防がれる。


「…兄さん?」


バレていた。


「ニイサン?ダレデスカソレ」


動揺すると片言になるのは白波夕十とシャオの共通点であった。


「兄さん」


「……」


「兄さん」


「………」


「兄さん」


「…………」


「に、いさん」


夕奈はちょっと涙目になっていた。

それに気づいたサラが剣を抜いた。


「貴様、夕奈様に何をした!」


「いや!何もしていない!」


めずらしく声をあげるシャオ

小声で救助を夕奈に求めた。

夕奈は涙を拭うと何でもないと言ってサラを宥めた。

リーナの援護もありしぶしぶサラは席について残っているパフェに手をつけ始めた。

勿論シャオを睨みながら。


「兄さん、後で部屋に来てください」


シャオは断ろうとしたが笑顔な夕奈を見て断ることができなかった。

笑顔の奥に冷たいなにかを感じ取ったのはキレヒの笑顔以来だった。

その後解散となり勇者二人は城が用意した部屋に送られていった。

シャオも用意された部屋に行こうとしたのだがサラに引き留められた。


「…何だ」


夕奈との約束もあるので早く部屋に戻りたかったシャオは不機嫌そうに振り返った。


「ついてきてもらおうか」


サラは殺気を放ちながらシャオを睨んだ

さっきとは違う武器を腰にさしていた。


「その程度で…勝てるとでも?」


シャオはそれを見て決闘と判断して簡単な挑発をした。

それに面白いように引っ掛かったサラは怒りで我を忘れてシャオの右手をとり中庭へ移動した。

シャオは手を引かれながらこれで一発かましておけば俺に突っかかってくることはないだろうと考えていた。

その考えが見事にはずれることも知らずに





――――――――――


「死んでも文句は言うなよ」


サラは赤い剣を手にし剣先をシャオに向けた。

夜ということもあり中庭には誰もいず、ひたすらに静寂であった。

シャオは剣を使うまでもないと判断して拳を構えようとしたのだがプライドの高い近衛騎士様がなめるなと言ってきそうだったので子供でも背伸びすれば買える安物の錆びたショートソードをシャオが昔創った異空間から転移で呼び出した。

シャオが取り出した得物にむっとしたサラだがシャオが貧乏な傭兵かなにかなんだろうと勝手に決め付けた。

よく考えてみればエタールからの使者だったのでそんなことは絶対にあり得ないのだが怒りでそこまでの思考が出来ないでいた。


「謝るのであれば数々の無礼は許してやってもいいんだぞ」


サラはシャオを挑発したがそれに乗るようなシャオではなく逆に挑発しかえしていた。


「そっくりそのまま返すよ」


シャオはブラーンと右手ごとショートソードを下げた。

サラはもう語ることはないとばかりに声をあげもう一本の最初からもっていたほうの普通の剣を抜き、二刀流でシャオに斬りかかった。

しかしシャオは右足を軸に左回りに回転しその時にショートソードを大降りに右腕ごと回転させた。

その結果サラの普通の剣は根本から斬られてしまった。

シャオは赤い剣も斬ったのだがヒビすら入らず逆にショートソードにヒビがいってしまった。

シャオは赤い剣は業物と判断して傷つけることを思考からはずした。

サラは剣が斬られたことで怒りを増し赤い剣に魔力を込めた。

真っ赤な炎だった。

サラの持つ赤い剣は“炎聖龍”と言い遥か昔、サラの先祖が倒したフレイムドラゴンというランクB+の魔物の素材からつくられたものでありとあらゆる炎を絶ち、あらゆる炎を纏うとまで言われた魔剣である。

そしてこの剣をつくったのが有名な鍛冶師グルムという男だ。

実はグルムはリヘルの元使い魔で今はどこかで自由に暮らしているとか。

そして炎を見たシャオは自信をへし折ってやろうとショートソードに焔を纏わせた。

これが厄介ごとの理由の1つになるとも知らずに

二人は一気に飛び出し剣を一閃させた。

ショートソードは粉々になり中庭に散った。

そしてサラはその場に倒れてしまった。


「俺の勝ちな」


中庭には再び静寂が訪れた。






――――――――――


シャオはサラを置き去りにして夕奈の部屋に向かった。

向かう途中で夕奈を驚かせてやろうと思い座標を計算して転移魔法で飛んだ。


「……」


「……」


しかし飛んだタイミングが悪かった。


「あーえーと…ごめん?」


「…ぅ……」


「あ、やべっ」


「へ、変態!し、死んじゃえぇええええええ!!」


着替えを覗くというかバッチリ見てしまったシャオは防音結界と防御魔法を張るのであった。



――――――――――


「反省しております」


「本当?」


「…はい」


現在シャオは国が用意したパジャマに着替えた夕奈によって正座をさせられていた。


「じゃぁ…許す」


夕奈はシャオを立たせると自分の座っているベッドの横に座るようにベッドの上を叩いた。

防御魔法をかけたのにも関わらず怪我をしたシャオは回復魔法を自分にかけながら夕奈の隣に腰をおろした。

しばらく沈黙が続き、意を決した夕奈が口を開いた


「あの………兄さん…だよね…?」


瞳に涙を浮かべ上目遣いでシャオを見た。

その体は小刻みに震えている。

大好きな兄と再会できるかもしれないという嬉さ、全くの別人であったときの絶望。

色々な感情が夕奈を不安にさせている。

シャオはもう隠す必要もないし、というか隠しきれないので本当のことを言うことにした。


「うん、俺は元白波夕十だ。でも転生し「兄さん…っ!」うわっ」


目の前の人物が大好きな兄だとわかると夕奈はいてもたってもいられなくなりシャオに抱きついた。

そして泣いた。

シャオはその華奢な体を優しく包み込み夕奈と再会出来たことを感謝しながら夕奈の頭を撫でた。

数十分たったであろうか

スースーと言う寝息が夕奈から漏れた。

兄の腕の中ですっかり安心しきってしまい再会できた嬉さを胸に寝てしまったのだ。

シャオは苦笑し夕奈をベッドに寝かせ毛布をかけた。

睡眠を邪魔しないように自分の部屋に戻ろうとした。

しかし腕を何者かに引っ張られ動けなかった。

振り返ると夕奈だった。

すぐに起きた夕奈はじっとシャオを見つめ「いっ…一緒に」と言って毛布に顔を隠してしまった。

一緒に寝ようと言いたかったのだが恥ずかしさが勝り最後まで言えなかったのだ。

シャオはしばらく考え込み睡眠魔法を夕奈にかけた。

そして自分も魔法でパジャマに着替えるとベッドの中に潜った。


「今日だけだからな」


シャオは夕奈の頭を軽く撫で「おやすみ」と言い自身も眠りについたのだった。





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