擬人化そして瞬間移動
「実は君は私と同じステータスを持っているのだよ、魔力然りアタック然りスピード然り。そして私は魔王や妖精、精霊より魔力があり龍王や勇者よりも力があり何よりも速い。要するにこの最強である私と同じ能力持ちと言うわけだ。だが持っているだけでは、シャオの国の言葉でいう宝の持ち腐れ状態と同じだ。ということで特訓してもらう。キレヒ」
魔術師がキレヒと言った次の瞬間、シャオの目の前にハーピーが現れた
「彼女はもう一匹の私の使い魔だシャオの先輩だからね。キレヒ、今日から1年シャオを鍛えてクリスタルドラゴンを倒せるようにしておいてくれ」
「…クリスタルドラゴンですか?」
彼女が驚くのも無理はない。
なんと言ってもクリスタルドラゴンとはドラゴンの頂点にして始まりであるからだ。始まりの龍や祖龍とか呼ばれている。
魔術師にかかればちょっと疲れるな程度で倒せる龍だ。
因みに魔王や龍王やキレヒならばちょっと苦戦する。
「そう、クリスタルドラゴン。大丈夫だよシャオ、龍の中で一番弱いから」
平然と嘘をついた。
しかし真実を知らないシャオはそれが普通なのかと納得した。
「じゃよろしく頼んだよキレヒ」
「はい」
――――――――――
それから半年がたった。
シャオはそこらへんの魔物には負けない程度には強くなったがサイクロプスやドラゴンなどにはまだ勝てそうにもなかった。
「ミー(キレねぇー)」
シャオは特訓を重ねるうちにキレヒのことを姉と慕うようになりまたキレヒもシャオを弟のように思うようになっていた
キレヒはシャオを抱き抱えると一撫でし笑った
「今日から一週間は野宿です。それとその森にはランクC+ぐらいの魔物からB-の魔物しかいないから気を付けてね」
C+は苦戦する程度で倒せるのだがB-はサイクロプスやドラゴンぐらいの強さである。
つまり生き残るには少々というかかなり難しい
キレヒは良い笑顔でシャオを撫でた
いつもなら顔を赤くして喜ぶシャオだが今は恐怖によりガタガタ震えていた。
そしてシャオの首を掴み窓の外へとぶん投げた。
普段は両手とも羽なのだが擬人化で今は人間の手になっていた。
シャオがみるみるうちに小さくなり消えた。
キレヒはそれを見送ると召喚魔法でクリスタルゴーレムを呼び出し転移魔法でシャオの飛んでいった森に送った。
補足だがクリスタルゴーレムはクリスタルドラゴンと同じで始まりのゴーレムと呼ばれている。
しかしクリスタルドラゴンほどは強くない。むしろ全然弱い
弱いといってもランクはA-だ。
キレヒはニヤリと笑い震える自分の体を抱いた。
「クリスタルゴーレムに引きちぎられて痛みに悶えるシャオ…あァ恋しいわ…」
キレヒはSであった。
――――――――――
「ミー…(酷い目にあった…)」
シャオは木の枝にぶら下がりながら姉貴分のキレヒを少し恨んだ。
シャオはその身体能力を活かし木から下りると自分の首輪を見た。
見た目はシャオの体毛と同じ黒で鉄製でできている。
これにはシャオの力を抑える力があり、現在はサイクロプス程度の力しかない。
ならばサイクロプスを倒せるのではないかと思うのだが体が子猫な上に戦闘経験も少なく負けてしまうのだ。
首輪を解いたらクリスタルゴーレムぐらいなら一発で殺せる力がある。
シャオは最初に安全に寝れる場所を探した。
数時間歩くが何処にもそのような場所はなかった。
シャオの体力は結構限界に近づいていた。
その時背後に気配を感じた。
シャオは体全部を使いその場からジャンプして後退した。
シャオのいた場所には錆びれた斧が刺さっていた。
そしてその奥には緑の体を持つ人間より一回り体のごついゴブリンがいた。
シャオはそれを撃退しようとキレヒの説明を思い出しつつ魔法の準備を始めた。
「いいですか、魔法というのは神様に自分の魔力を差し出しその対価として魔法を授けてくれます。だから常に神への感謝を忘れないでください。まっぶっちゃけると本当かどうかはわからないのでどーでもいいです。魔力が少ないと神様に頼るしかないんですが我々のように魔力が高ければ自分で発動できちゃいます。発動したい魔法のイメージをはっきりと思い浮かべて詠唱します。これは魔力の少ない人のやり方です。我々は無詠唱でイメージもいりません。ただ頭の中で属性と形状を言うだけで良いです。でもこれもシャオには関係ありません。マスターが言うにはシャオには“げぇむ”の知識とか“らのべ”の知識があるそうなのでそれを思い浮かべるだけで同じことが出来ます。まぁ魔法なんてあやふやなもんなんですよ」
本当あやふやだよとシャオが勢いよく突っ込んだのを思いだしシャオは少し笑ってしまった。
「ミミー、ミー!(雷鳴よ、貫け!)」
詠唱は必要ないのだが格好がつくのでシャオは使っている。
ゴブリンは雷に焼かれて消滅した。
と、そこにサイクロプスが現れた
「ミミミー!?(初っぱなからピンチかよ!?)」
シャオは体に身体能力を上げる魔法を駆けて迫り来るサイクロプスのこん棒を避けた。
「ミー?ミー(どうする?普通にやっても勝てないぞ)」
シャオはなんとかサイクロプスの攻撃をかわしながら何か策はないかと思考を巡らせた。
数分たちサイクロプスは段々と怒りを露にしてきた。
こん棒を振るのが大きくがさつになってきた。
シャオはこれはチャンスと炎の魔法と雷をぶつけた。
サイクロプスは少し唸るが気にせず今だこん棒を降り続ける
「ミー…(勝てる気がしねー…)」
シャオは半ば諦め攻撃を避け続けた。
そこでふと思い出す
思い浮かべるだけで魔法が使える。
魔力が少ないと神様に頼むしかないく、無茶な魔法などは発動させてくれない。
しかしシャオやキレヒ、マスターである魔術師は魔力が高いので関係はない。
となるとほぼ何でも魔法で出来てしまうのだ。
シャオはそれを思い出して実行してみた。
「ミー!(瞬間移動!)」
思い浮かべた瞬間シャオの体は消えてサイクロプスの頭上に現れた。
シャオは成功を喜んだがそのせいで大振りにしていたこん棒に当たってしまった。
「ッ!?」
肺から望んでもいないのに大量の息が排出され気分が悪くなる。
そして衝撃のせいで骨も何本か折れたり砕けたりした。
シャオは死んだときに味わった痛みよりもさらに苦しい痛みを感じながらサイクロプスを睨んだ。
だが睨んだところで何も変わらない。
サイクロプスはシャオ目掛けこん棒を振り下ろした。
しかしそれはシャオに当たることはなかった。
シャオは必死の思いで瞬間移動、瞬間転移魔法を発動させサイクロプスの一つ目の前に現れた
シャオはサイクロプスの目に雷の魔法をぶち当て地面に落ちていった。
サイクロプスは生まれてから今までで一番痛いその痛みを感じつつこの世から去った。
シャオはそれを朦朧とする意識の中見届けると深い眠りについた。
――――――――――
シャオが目を覚ましたのは五日後だった。
サイクロプスの死体の影になりほかの魔物には見つからずいた。
サイクロプスとの戦いでの傷と空腹で目が覚め自分が死にかけているのに気がついた。
回復魔法をかけ傷は治ったのだが空腹が満たされない。
五日間飲み食いせずにいたのですっかり痩せ細っていた。
人間ならば良くて瀕死悪くて死んでいたのだがシャオは魔物なので大丈夫だった。
シャオは空腹に負けて気持ち悪がりながらもサイクロプスを食した。
腕の一部だけでお腹がいっぱいになったのは体が子猫サイズだからだろう。
「ミーミー(たっくキレねぇめ、ただの猫に何やらせるんだ)」
シャオは猫耳族という擬人化できる種族なのだがシャオはただの猫だと思っている。
ゴブリンやコボルトなど雑魚を倒してこの日は終わった。
次の日またシャオは窮地に立っていた
「ミー…(何あのピカピカ…)」
シャオはピカピカと呼んだが実はクリスタルゴーレムである。
体の周りをエレルクリスタルという緑色のクリスタルに包まれた全長四メートルのゴーレムだ。
ランクはA-だ。
シャオは挨拶変わりだと言わんばかりに槍状の風を飛ばしたがクリスタルゴーレムの体に当たると消え失せた。
「ミ…?(え…?)」
エレルクリスタルは魔法を無効化するのだが知るはずもなくシャオは驚いた。
クリスタルゴーレムはシャオを敵視し拳を振り上げシャオに振り下ろした。
「ミーー!?(いやぁーー!?)」
シャオはいきなりの攻撃に驚き余計な分まで避けてしまった。
いきなり攻撃してきたクリスタルゴーレムに怒ったが、いきなりの攻撃といっても自分もそうなので怒りを抑えた。
シャオは瞬間転移魔法でクリスタルゴーレムの背後に回ったのだがクリスタルゴーレムの裏拳が飛んできてもろにくらってしまった。
サイクロプスの時とは比べ物にならないくらいの力だったのでシャオはあと一歩で死ぬような大怪我をおい、意識を手放した。
クリスタルゴーレムがシャオの息の根を止めようと拳を振り下ろした。
しかしその拳は腕ごと何者かに切り落とされた。
「シャオにはまだ早かったかな?」
キレヒだ。
今日で野宿が終わりなので迎いにきたのだがシャオが死にかけていたので助けたのだ。
キレヒは自ら送り込んだのにも関わらずシャオをこんな風にしたクリスタルゴーレムに怒りをぶつけ、バラバラに解体しては回復魔法でひっつけバラバラにするまた回復魔法をかけてバラバラに
これを繰り返し回復出来ないほどに粉々にしシャオに回復魔法をかけて自分達が住んでいる城に戻っていった。