オオカミのいいこと
案が浮かんだので書いてみました。
真性の駄文ですが読んでいただければ光栄です。
むかしむかし、ある所に生きることが嫌になったオオカミがいました。
オオカミはいつも、どうすれば死ぬことができるか、考えていました。
ある日、洞窟の中でどうすれば死ぬかを考えていると、洞窟に、1匹の子ギツネが迷い込んできました。
オオカミは、子ギツネを食べてしまおうかと思いましたが、お腹がへっているわけでもないので、次会った時に食べやすいように子ギツネと話をすることにしました。
オオカミは何も食べなければ死ぬことができるということを知らなかったのです。
「坊や、こんなところにどうしたんだい?」
オオカミは姿を見せないまま、優しげに話しかけました。
子ギツネは答えました。
「ぼく、迷子になっちゃって、お母さんが見つからないんだ。」
「そうかいそうかい、それはまた、大変だねぇ。でも大丈夫。こういうときは動かないで、じっとしているのがいいんだ。そのうち、お母さんが見つけてくれるよ。」
「えっ、本当?」
「本当だとも。でも一人で待ってるっていうのもさびしいだろう?だからおじさんとおはなししようか。」
「うん!」
そこから2匹はおはなしをしました。子ギツネがほとんど一方的に話していましたが、オオカミはとても楽しそうでした。
おはなしを始めてしばらく経ったころ、子ギツネは狼に聞きました。
「そういえば、おじさんには家族はいないの?」
そう聞くと、オオカミは黙り込みました。
しばらく経った後、オオカミは語り始めました。
「おじさんの家族はね。少し前に人間に殺されちゃったんだ。」
想像以上に重い話に、子ギツネは黙り込みます。
「おじさんの家族はね、川で水遊びをしているうちに人間に見つかって殺されちゃったんだ。」
「おじさんはね、そのとき食べ物を取りに行っていたから助かったんだけどね。とても………とても寂かった」
子ギツネはオオカミの話に聞き入っています。
「おじさんはね、早く家族の所へ行きたいんだ。………でも、どうすればいいか分からない。どうすれば、いいのかな……………………」
そこまで言いきったところで母ギツネが見えました。
「あ!お母さんだ!おじさん。おはなし、聞いてくれてありがとう。」
「どういたしまして。あとさっきの話は子供に話すことじゃあなかったね。ごめんよ」
すると子ギツネは振り向き、言いました。
「おじさんのおはなしはむずかしいからよくわからなかったけど、お母さんがお願い事はいいことをすれば叶うって言ってたよ。だからおじさんもいいことをしてみたら?じゃあおじさん、バイバイ」
オオカミの心にその言葉が響き渡りました。
それより少し後のある雨の日、オオカミは子ギツネに言われたことを考えていました。
オオカミは他の動物を食べる動物です。そんな動物なので今までいいことをしたことがありませんでした。オオカミは何がいいことなのかも知らないのです。
「おかあさん!助けて!」
悲鳴が聞こえました。この声は子ギツネのものです。
オオカミは駆けつけました。するとそこには5匹の猟犬に囲まれた子ギツネがいました。
オオカミは駆けつけました。
まず、猟犬の1匹に噛みつき、全員を怯ませたところで、子ギツネをくわえて、輪の中から脱出しました。
そして辺りを走り回ると、子ギツネの親を見つけました。
親のところまで行くと、オオカミは子ギツネを降ろし、後ろを振り返り、猟犬の所へ向かって歩き出しました。
すると後ろから声が投げ掛けられました。
「オオカミさん。どこに行くの?」
オオカミは言いました。
「さっきの猟犬さん達のところに行くんだよ。逃げる時間を誰かが稼がないとみんな食べられちゃうだろう?」
その後も子ギツネはなにか言っていましたが、オオカミは無視して、猟犬の元へむかいました。勝ち目なんてありません。いくら百戦錬磨のオオカミといえど、多勢に無勢、勝てるわけがありません。
勝てるから戦うのではないのです。戦わなければならないから戦うのです。
しばらく後、子ギツネは待ちきれずに親の静止も聞かずにオオカミの所へ走り出しました。
そこには死体しかありませんでした。
「オオ、カミ………さん?」
その声に、少し反応したものがありました。
オオカミです。
子ギツネは駆け寄りました。
「オオカミさん!」
「坊、や…………おじさん……は…………いいことを…………してみた…………よ」
「おじさんって実はオオカミさんだったんだね…………
でもなんでこんな…………」
「ハハ…………ねぇ坊や。…………おじさんはこれで、みんなの所へ…………行ける…………か、な……」
「行けるよ!おじさんはとってもいいことをしたんだから!」
「ああ…………おまえたち…………いま行くよ…………」
最後にこう言ってオオカミは力尽きました。いえ、家族のもとへ向かったのでしょう。
「お父さん。またあの話、聞かせてよ。」
「またか?おまえはこの話が本当に大好きだなぁ」
「うん!僕、あのおはなし大好き!」
「そうかそうか、じゃあ話すぞ。あるところに子ギツネとオオカミがいてね――――」