異世界の戦争はちょっと違う
10年にわたるアトラス王国とガムル皇国の戦い。
かつて防戦一方だったガムル皇国は戦線を立て直し、逆にアトラス国土を奪うべく進軍を開始しようとしていた。
そしていま、アトラス王国海岸において、ガムル皇国の上陸作戦が始まった。
【上陸作戦部隊 第一大隊 第二隊】
「進めぇ! 歩兵は上陸次第速やかに橋頭堡を築け。砲兵は後方で援護射撃を続けろ。」
「隊長! 敵の抵抗が激しいです。銃撃が止みません。前線兵士の死傷者数が100を超えました!」
「海岸線に塹壕を掘れ。
副官。直ちに敵市役所に向かい、塹壕の建築許可申請を行え。」
「はっ!」
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【アトラス王国 ゴラン市役所】
「塹壕の建築許可お願いしまーす。」
「ここはね、建設課。海岸工事は河川局にお願いしますね〜。」
「分かりました〜」
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「塹壕の建築許可お願いしまーす。」
「どれどれ...。あーごめんねー。この場所はゴラン工業港特別指定区域内だから、港湾課に行ってもらえるかな〜。」
「分かりました〜。」
*****
「塹壕の建築許可お願いしまーす。」
「はい受領!」ポン
「ありがとうございました〜。」
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【上陸作戦部隊 第二隊司令詰所】
「許可取ってきました!」
「遅い!! 何をしていたんだ。」
「申し訳ありません! 申請をたらい回しにされまして、」
「言い訳無用! もう昼休みに入っているではないか。
時間外勤務の申請を出しておけ!」
「はっ!
時に隊長、戦況はどのような状況でしょうか?」
「昼休みまでに海岸線を押さえられなかった。
見ろ。敵さんは砂浜で昼食中だ。
仕方がない。1300攻撃再開だ。」
(うわぁ。昼休み30分だけかぁ。)
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【アトラス王国海岸線】
「1300だ、攻撃を再開する。進めぇっ!!」
ウオォォォォ!!!
「申し上げますっ!!
中央に展開中の第一隊司令部に敵砲が直撃。大隊長 ロバート•ダイス中佐 戦死っ!!」
なんだと!!?
決裁権限はどうなる?
弾薬使用許可は誰が出すんだ!?
...ザワザワ
「狼狽えるな!!
決裁権限表に『臨時の場合は第二隊隊長が大隊長代理に昇格する。』とある。
まずは本国に照会だ。
『今回の案件は【臨時の場合】に該当しますか?』
とな。
それと副官! 本部に打電。全軍に訃報通知を流すよう伝えろ。」
「はっ。
ええっと...
『ロバート•ダイス中佐に於いては かねて戦闘中のところ 9月27日 37歳にて永眠いたしました ここに生前のご厚誼を深謝し 謹んでお知らせ申し上げます
なお 葬儀は故人の遺志により 近親者のみにて家族葬として執り行いますので ご参列ならびにご香典・ご供花・ご弔電等につきましては 謹んでご辞退させていただきます』
...と。はい、これでお願いします。はい、はい。お手数おかけします。はい。どうもー。」
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「それにしても戦況が芳しくない。圧倒的に火力が足りない。
それというのも『アレ』のせいだ。」チッ
「本国から届いた追加の銃ですね。」
「そうだ。
よりによって【備品番号】の刻印を忘れるとは...。
これでは使えないではないか!!」
「今朝、本国から『急ぎこれで急場を凌がれたし』と、ウミネコ宅急便で備品ラベルが送られてきましたが。」
「防水ですらない紙のシールなど使えるかっ!!」
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「駄目です!! 前線が維持できません!!」
「むぅ。」
「撤退戦に移ろうにも、敵の攻撃が激しく。兵を収容するための揚陸船の接岸も困難とのこと。
このままでは我々上陸部隊は全滅です!!」
「全軍に通達!!
あと少し、あと少しでいい。防衛に徹し、各自現在の陣地を死守しろ!
今日は水曜日!
定時退勤日だ!
残業はないぞ!
1800まで持ちこたえれば、今日の業務は終了だ!!!」
「はっ!!
全軍に伝える! 全軍に伝える! ...」
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【アトラス王国海岸線より数km沖 洋上】
「なんとか持ちこたえたな。副官。」
「まさに首の皮一枚でしたね。隊長、いえ大隊長代理。」
「うむ。
前年の世界統一労使協定で退勤時間が15分繰り上がっていなければ全滅していた。
...それにしても、これだけの激戦。損耗は甚大。
明日は地獄だぞ。」
「そうですね......明日は月末。」
「そう......棚卸しだ。」
「はぁ。」
「はぁ。」
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【アトラス王国守備隊】
「あと少し。あと少しでガムルの奴らを殲滅できたというのに。 口惜しやっ!!」
「仕方ありません司令官。今日は定時退勤日です。
司令官もこのあと私用があるのでは?」
「おお、そうじゃった。『虐げられた王女は隣国皇帝に嫁いで溺愛される』の新刊発売日だからな。閉店前に本屋に行かねばならんのじゃった。
ではお先。戸締まり頼むね。」
「お疲れさまでしたー。」
おしまい




