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異世界の戦争はちょっと違う

作者: ひろ
掲載日:2026/09/28

 10年にわたるアトラス王国とガムル皇国の戦い。


 かつて防戦一方だったガムル皇国は戦線を立て直し、逆にアトラス国土を奪うべく進軍を開始しようとしていた。


 そしていま、アトラス王国海岸において、ガムル皇国の上陸作戦が始まった。




【上陸作戦部隊 第一大隊 第二隊】



 「進めぇ! 歩兵は上陸次第速やかに橋頭堡を築け。砲兵は後方で援護射撃を続けろ。」


 「隊長! 敵の抵抗が激しいです。銃撃が止みません。前線兵士の死傷者数が100を超えました!」


 「海岸線に塹壕を掘れ。

 副官。直ちに敵市役所に向かい、塹壕の建築許可申請を行え。」


 「はっ!」



***************

【アトラス王国 ゴラン市役所】



 「塹壕の建築許可お願いしまーす。」


 「ここはね、建設課。海岸工事は河川局にお願いしますね〜。」


 「分かりました〜」


   *****


 「塹壕の建築許可お願いしまーす。」


 「どれどれ...。あーごめんねー。この場所はゴラン工業港特別指定区域内だから、港湾課に行ってもらえるかな〜。」


 「分かりました〜。」


   *****


 「塹壕の建築許可お願いしまーす。」

 

 「はい受領!」ポン


 「ありがとうございました〜。」



***************

【上陸作戦部隊 第二隊司令詰所】



 「許可取ってきました!」


 「遅い!! 何をしていたんだ。」


 「申し訳ありません! 申請をたらい回しにされまして、」


 「言い訳無用! もう昼休みに入っているではないか。

 時間外勤務の申請を出しておけ!」


 「はっ!

 時に隊長、戦況はどのような状況でしょうか?」


 「昼休みまでに海岸線を押さえられなかった。

 見ろ。敵さんは砂浜で昼食中だ。

 仕方がない。1300攻撃再開だ。」


 (うわぁ。昼休み30分だけかぁ。)



***************

【アトラス王国海岸線】



 「1300だ、攻撃を再開する。進めぇっ!!」



    ウオォォォォ!!!



 「申し上げますっ!!

 中央に展開中の第一隊司令部に敵砲が直撃。大隊長 ロバート•ダイス中佐 戦死っ!!」


  なんだと!!?

   決裁権限はどうなる?

    弾薬使用許可は誰が出すんだ!?

      ...ザワザワ


 「狼狽えるな!!

 決裁権限表に『臨時の場合は第二隊隊長が大隊長代理に昇格する。』とある。

 まずは本国に照会だ。

 『今回の案件は【臨時の場合】に該当しますか?』

 とな。


 それと副官! 本部に打電。全軍に訃報通知を流すよう伝えろ。」


 「はっ。

 ええっと...


 『ロバート•ダイス中佐に於いては かねて戦闘中のところ 9月27日 37歳にて永眠いたしました ここに生前のご厚誼を深謝し 謹んでお知らせ申し上げます

 なお 葬儀は故人の遺志により 近親者のみにて家族葬として執り行いますので ご参列ならびにご香典・ご供花・ご弔電等につきましては 謹んでご辞退させていただきます』


 ...と。はい、これでお願いします。はい、はい。お手数おかけします。はい。どうもー。」



***************



 「それにしても戦況が芳しくない。圧倒的に火力が足りない。

 それというのも『アレ』のせいだ。」チッ


 「本国から届いた追加の銃ですね。」


 「そうだ。

 よりによって【備品番号】の刻印を忘れるとは...。

 これでは使えないではないか!!」


 「今朝、本国から『急ぎこれで急場を凌がれたし』と、ウミネコ宅急便で備品ラベルが送られてきましたが。」


 「防水ですらない紙のシールなど使えるかっ!!」



**************



 「駄目です!! 前線が維持できません!!」


 「むぅ。」


 「撤退戦に移ろうにも、敵の攻撃が激しく。兵を収容するための揚陸船の接岸も困難とのこと。

 このままでは我々上陸部隊は全滅です!!」


 「全軍に通達!!

 あと少し、あと少しでいい。防衛に徹し、各自現在の陣地を死守しろ!


 今日は水曜日!


 定時退勤日だ!


 残業はないぞ!


 1800まで持ちこたえれば、今日の業務は終了だ!!!」


 「はっ!!

 全軍に伝える! 全軍に伝える! ...」



***************

【アトラス王国海岸線より数km沖 洋上】



 「なんとか持ちこたえたな。副官。」


 「まさに首の皮一枚でしたね。隊長、いえ大隊長代理。」


 「うむ。

 前年の世界統一労使協定で退勤時間が15分繰り上がっていなければ全滅していた。



 ...それにしても、これだけの激戦。損耗は甚大。

 明日は地獄だぞ。」


 「そうですね......明日は月末。」


 「そう......棚卸しだ。」


 「はぁ。」


 「はぁ。」



***************

【アトラス王国守備隊】



 「あと少し。あと少しでガムルの奴らを殲滅できたというのに。 口惜しやっ!!」


 「仕方ありません司令官。今日は定時退勤日です。

 司令官もこのあと私用があるのでは?」


 「おお、そうじゃった。『虐げられた王女は隣国皇帝に嫁いで溺愛される』の新刊発売日だからな。閉店前に本屋に行かねばならんのじゃった。

 ではお先。戸締まり頼むね。」


 「お疲れさまでしたー。」




おしまい

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― 新着の感想 ―
お邪魔します。 大変楽しく拝読させていただきました。 登場人物達のやり取り、会話は、当人達は至って本気で真面目でも、世界の違う我々からは可笑しなもの。 作品を読んで、 知る人ぞ知る(私は)名作(だと思…
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