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第5話:初戦闘 vs狂気の奴隷商人

老人は話し出す。


まずこの街で奴隷を売買することは"法律的には"問題ない。

しかし、道徳の観点からは問題があり、街の住人は奴隷取引を嫌いはじめた。

よって、法律上は問題ないものの、実際には取引を行う者はいない状況が出来上がっていった。

今や奴隷の購入はこの街の恥とみなされ、口にするだけで街の住人からは罵声を浴びせられる。


現在となっては、ただ一人の男だけが奴隷商人をやっている。

その男だけは意地を張って奴隷商人をやめようとはしなかった。

その男は街の住人全員から嫌われており、もはやコミュニケーションをとるものは誰もいない。


「勇者殿は外の世界から来たのじゃ、事情を知らなくて当然じゃな。あれじゃろ、荷物持ちが欲しいんじゃろ。」


「「...。」」


二人は黙り込んでいた。「自分たちは戦えないから奴隷を買って戦闘させようとしていた」などとはとても言えなかった。

あまりにも情けなく、そして恥ずかしすぎる事情であった。

そんな二人のことなど知るはずもなく老人は続けた。


「この世界を救う勇者殿が自分で荷物持ちをするなんてあってはならぬ。ほれ儂が案内してあげよう。」


こうして二人は老人に案内され、街の路地裏に入っていった。



路地裏のどんよりと淀んだ空気の中、一人の男が立っている。

その男の目は黒くよどんでおり、精気がない。

何か社会の闇を見てきて、世界に絶望しきったような...そんな目をしていた。


「クーニャ、下がっていろここは俺が出る。」


「...頼んだわよ。」


本来であれば、自分が出ていきたいところではあるが、何せ相手は油断ならない奴隷商人だ。

ここは新太郎の持つチートスキル「誰かと漫才を繰り広げる能力」にかけることにした。


「あんたが奴隷商人かい?。話は聞いているよ、街の住人にいじめられて大変なんだって?」


「そうだな、おじさんみたいな奴隷商人は街の嫌われ者なんだ。それで、君はおじさんに何の用事かな。」


「いやぁ新鮮なのが欲しくてね、分かるだろう?。つまりそういうことだよ。」


「なるほどね、だがいいのかい?奴隷は高いよ?」


「そうだなぁ、割引みたいなのはあるか。ほら、『友達紹介キャンペーン』みたいな。」


「ないよ。」


「そうか。まあ、あっても紹介できるのは妖精しかいないんだけど。」


「妖精か、あいつらはあんまり役に立たないからなぁ。売値も低そうだ、まあ売ったことはないから知らんけど。」


「売ったこともないのに売値がわかるんかーい」


「「ハハハハハ!!」」


一緒に笑う2人をクーニャは殺意のこもった顔でにらんでいた。


「さて奴隷商人のおじさん。本題に入ろうか、早速商品を見せて....アレ?」


そこでようやく新太郎は気が付いた。肝心の売り物となる奴隷がどこにもいないのだ。


「奴隷は一体どこにいるんだ?」


「何を言っているんだい?。いるじゃないか、ほら、ここに」


そういうと奴隷商人は指さした。自分を。


「...。まさか自分を売り物に?。こういうのって普通は若い女の子とか、力の強い男とかが売られているんじゃ?」


「あのね、常識で考えてくれる?。若い女の子や、力のある男はわざわざ奴隷にならなくても働き口はあるの!!、それくらいわかるでしょ!!。」


なんか知らんが切れだした。


「おじさんだって本当はこんなことしたくないの!!、でもねもう自分しか売るものがないんだよ!!。だから買ってよねえ!!、おじさん買って!!。」


「買って買ってわがまま言うんじゃありません!!、うちにそんなお金はないの!!。いい子にしなさい!!。」


新太郎も悪乗りを始めたようだ、こうなるともう止まらない。


「やだやだ買って買って!!僕いい子にするから!!。」


「またあんたはそんなこと言って!!、そうやって都合のいい時だけいい子になると約束するんだから!!。奴隷商人をやって来たのに今さら後悔してももう遅い!!。」


何だこの地獄絵図は、とクーニャは思った。

新太郎の能力が発動しているのかなんだか分からないが、こんな頭の悪いやり取りを見ていたらこっちまで気が狂いそうだ。

ここは自分が止めに入るしかない。


「ちょっと二人とも落ち着いて、冷静に話し合いましょう。」



クーニャが止めに入ったことにより、新太郎と奴隷商人は落ち着きを取り戻した。

冷静になったうえで、奴隷商人に「奴隷を買う意思はあったが、戦闘ができるような強い男を求めて来た」と伝え何とか理解してもらえた。

さすがにこの奴隷商人が、戦闘用の奴隷になれるとは思えない。


「申し訳ない奴隷商人のおじさん。少し暴走してしまったようだ。」


「いやいやこちらこそ。奴隷商売なんて儲からないんだけど、今更生き方を変えることもできなくてね。もう自分しか売るものがなくて必死だったんだ。」


「それでは俺たちはこれで...。」


「ああ少し待ってくれないか、迷惑をかけたお詫びに渡したいものがあるんだ。」


そういうと奴隷商人は後ろを向いた。箱の中から何かを取り出しているようだった。

何かいいものくれるのかぁ、と新太郎はのんきに考えていた。

しばらくすると、奴隷商人は向き直り、握った手を差し出してきた。


「君の手を出してくれないか、おじさんから渡したいものがあるんだ。」


新太郎は手を差し出した。奴隷商人の手がゆっくりと開かれる。

何かひんやりとした感触があった。何かこう、金属のような感触である。

恐る恐る手のひらを見つめると、銀色の長い物体。一般的に言うところの「鎖」があった。


そして、その鎖がつながる先を視線でたどる。

視線の先には、奴隷商人がいつのまにか着けていた「首輪」があった。


「はい、持ちました!!、首輪の鎖持ちました!!。これでお前はご主人さまでぇえええええええええす!!」


「おい逃げるぞクーニャ!!、コイツいかれていやがる。」


「あんたもでしょ。」


こうして、新太郎とクーニャの命をかけた(?)初めての戦闘が始まった。

ブックマークや評価があるとうれしいにゃん♡

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