第4話:奴隷市場で捕まえて
「おいおいクーニャ冗談だろ!?」
新太郎は驚愕していた。いかに度を越した馬鹿であろうと"奴隷"が道徳に反することぐらいは理解できる。よりにもよって、可憐な妖精から奴隷を買おうとの提案が出たのである。
「本気よ、物理的攻撃力皆無の私と、ゴミスキル持ちのあんたじゃゴブリン一匹倒せないわ。」
「で、でも...。」
「聞き分けて!!いい子だから!!このままじゃ私たち死んじゃう!!」
「分かった...。クーニャ、行くよ。俺、奴隷市場に行くよ..。」
「...っ。ありがとう新太郎。大丈夫よ、私も一緒だから...。」
「ありがとうクーニャ。それじゃあ行こうか!!俺たちの新たな仲間を迎えに!!。」
「ええ!!これは希望の船出よ!!」
こうして二人は、手をつなぎ鼻歌を歌いながら、仲良く奴隷市場へと向かっていった。
◇
神聖帝国。それは地上を支配する人間の中心の帝国である。
首都のウィンを中心に、各地に点在する有力都市が帝国の支配に大きな力を持っていた。
例えば「マクドブルク」、「フランクフルト」、「ニュルンミルク」といった都市が有名である。
新太郎たちが今いる都市「ハンバルグ」もその一つであった。
「いや~、改めて見ると本当にすごいな。中世RPGの世界みたいだ。」
「その、RPGっていうのは分からないけど、気に入ってくれてよかったわ。ここハンバルグは港湾都市として有名なのよ。」
さわやかな潮風が街を駆け抜け二人の肌をなでる。
街には荷下ろしを行う水夫が行き交い、その水夫たちを相手にする商店が立ち並ぶ。
出店も軒を連ね、いかにも商業都市といったたたずまいであった。
奴隷市場に向かう道すがら、新太郎はある出店が気になった。
その店からは肉を焼くいい匂いが漂ってくる。
「なあ、クーニャ。少し腹ごしらえがしたいんだが、あの店の料理は知っているか?」
「『ハンバルグ風ひき肉焼き』ね。この町の名物よ、ひき肉に野菜とスパイスを練りこんで固めて焼いたものよ。」
なんか元居た世界で同じような料理があったなぁと思ったが、気にしないことにした。
「腹が減ったから買ってくる、問題ないよな?」
「金銭的な意味では問題ないけど、その...」
クーニャはなぜか、言いよどむ。何か理由があるのだろうか。
特に問題があるとは思えないが。
「ひき肉焼きは店によって当たり外れが大きいの。特に肉については何を使っているか分からないわ、ミンチにしているから余計にね。」
なんかこれも元居た世界で同じような話があったなと思ったが、とにかくお腹がすいている。
クーニャは別の店を見たいというので、その場に待たせて新太郎は出店の方へと向かっていった。
店主は恰幅のいい金髪碧眼のおじさんだった。
おいしそうな肉のにおいが漂ってくる。
今すぐにも買いたいが、クーニャの忠告を無視するわけにもいかない、一応は聞いておくことにした。
「おっちゃんひき肉焼きを買いたいんだが、いいかい?」
「おうよ!!、うちのひき肉焼きはハンバルグ一番だよ。」
「1つ聞きたいんだけど、この店のひき肉は"どんな肉"をつかっているんだ?」
「新鮮な肉をつかっているよ!!」
「それは良かった、それで"何の"肉を使っているんだ。」
「ハハハハハ、兄ちゃん冗談きついぜ。肉なんだから"動物"の肉に決まってんだろ!!。植物から肉が出来るとでもいうのかい?」
「いや、その動物は何の動物を使っているのかと。」
「兄ちゃんは面白いなぁ。ミンチなんだから"色んな動物"の肉に決まってんだろ!!。一つの動物の肉じゃ味わえない豊かな風味を楽しめるよ!!」
「それは具体的に..、いやもういいです。一つください。」
どの動物をどの程度の割合で、という事を聞いたとしても、「そんな細けぇこと忘れたよ!!、いいから買いな!!」の一言で片づけられるだろう。
まあ店を構えているということは、そこまで変な肉ではないと信じよう。
「ほいよ、ひき肉焼きお待ち。熱いからゆっくり食べなよ。」
店主は肉をパンに挟んで差し出してきた、手が汚れないようにという事だろう。
もうこれ完全にハン〇ーガーだなと、彼は思った。
そういえば自分たちは奴隷市場に行く予定だが、場所までは分からない。
腹ごしらえをした後で聞き込みをするつもりだったが、この店主に聞けばよいのではないだろうか。
商人同士だから知り合いかもしれない。
「おっちゃん。実はある商人を探しているんだが、聞いていいか。」
「おういいぜ、俺は顔が広いからな。聞いてみろ!!」
「それじゃあ聞くが、この街の奴隷商人に会いた...」
その刹那であった、新太郎の顔に何かが叩きつけられる。
ピンク色でなんかべったりとしたもの、それは焼く前のひき肉の塊であった。
「出ていけぇ!!、こんダラズがぁ!!」
「あ、あの...少し話を...」
「道徳心の欠片もないクズめ、貴様なんぞこのゴミ肉に混ぜる価値もないわ。ああなんと汚らわしい。こんな男のために商売をしてしまっただなんて...。天にまします我らの父よ我が罪を許し給え」
やはり異世界であっても奴隷は道徳的に良くないものであるようだ。
いや、今確かに「ゴミ肉」って聞こえたような気がする。
だがもうこの店主には何を聞いても無駄だろう。新太郎はあきらめてクーニャの元に帰っていった。
◇
「新太郎...。あなたその顔どうしたの...。」
クーニャの元に帰って来た新太郎だが、その顔にはひき肉の破片と脂がくっついていた。
ある程度は自分でとったものの、さすがに限界があった。
新太郎はクーニャに事情を説明し、肉の細かい破片はクーニャに取ってもらった。
「なあ、クーニャこれからどうする?」
「困ったわね。奴隷商人は確かにいるはずなんだけど...」
二人が悩んでいると、一人の老人がこちらにゆっくりと歩いて来た。
新太郎とクーニャは警戒したが、ぶんぶんと手を振っており「敵意はないよ」とアピールしているようだった。
「災難じゃったな勇者殿、この街の事情をあまり知らないんじゃろ。少し話をしてあげよう。」
そう言うと老人は、ハンバルグの奴隷事情について話を始めた。
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