不老の少女-4
「…は?」
おかしなことを言う彼女に、椿はカウンター席から降り、女性の隣に座って顔を近づけた。
「…フン。ただの女の子じゃん」
自身を120歳だと言った女性だが、肌の張りや髪艶,骨格…見れば見るほど二十歳前後にしか見えなかった。
制服を着ても違和感がない、女性というよりは、まだ女の子だ。
「(それにしても、何だこのコ)」
帽子の下に隠れた陶器のような肌、長いまつ毛に縁取られたガラス玉のような瞳、桜色の唇。
淀みの無い瞳で真っ直ぐ見つめられると、椿は息が詰まる感覚になった。
女の子を見て圧倒されたのは、中学生のとき、初めて海外のコレクションに出演したとき以来だ。
世間から「綺麗」「可愛い」と言われる女性は、仕事で腐るほど見てきたし、見てくれに惑わされるほど、今の椿は無知ではない。
なのに、ゆるいウェーブのロングヘアは、陽に透けると透明度が増し、動くたびに艶々と揺れる。
椿は、思わず指で梳くように、少女の髪を絡め取った。
「指通りスルスル。ねえ、これ地毛?」
「地毛だよ」
「ふぅん。その目は?」
「自前。カラコン入れてない」
「肌は…何にもしてなさそう」
そして、親指で少女の唇をなぞった。
「唇の形は?」
「これも自前」
整形だと言われているような気になり、少女はムッとした。
「でも僕は信じないよ。ナンパにしては面白かったけど、お兄さんは間に合ってますから、他を当たってよ」
少女はしゅんとした。
「椿くんなら、分かってくれると思ったのに…」
椿は呆れ混じりの溜息を吐いた。
「僕のこと知ってるの?」
「もちろん。知らない人の方が少ないでしょ?」
「もしかして、僕に近づくためにここに来たの?」
「うーん…」
「構ってちゃんは苦手なんだけど?」
「違います。でも匿ってほしいです」
「はあ?」
女の子は椿の耳元でそっと囁いた。
「不老の理由、知りたくない?」
不老の少女 終
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