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不老の少女-2
撮影後、椿はタクシーで喫茶店に向かった。
都会の喧騒から少し離れた、昔ながらの喫茶店。
お客はあまり来ないが、椿にとって数少ない安息の場所だった。
薔の存在もあり、いつも以上に心身を消耗した椿は、疲れた顔で喫茶店のドアをくぐった。
「おう、いらっしゃい」
カウンターの中のマスターは、趣味の釣りで日焼けした顔で、ニカッと笑って椿を迎えた。
しかし、この日は珍しく他にお客がいた。
10代後半くらいの女性だ。
帽子を深めに被り、隅のボックス席で週刊誌を読んでいる。
顔はよく見えないが、色素が薄く艶やかなゆるく巻かれたロングヘア、小さな顔、華奢な肩、そして空気感から、なかなかの美少女だと分かる。
椿は横目で一瞥して、いつものカウンター席に座った。
「ブラジルサントス」
「チョコレートは?」
「いる」
いつも頼むコーヒーとおまけのチョコレート。それは椿が〝普通〟を感じられる数少ないモノだった。
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