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人魚の雫  作者: 麻婆豆子
こぼれ落ちていく、白い夜

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こぼれ落ちていく、白い夜-4

「(もしかして、出て行った?)」



 椿が悪い展開を想像したとき、暗闇をかき分けるように渚が椿に駆け寄ってきた。



「椿くん…!」

「おっ…と、びっくりしたぁ…!」

「帰ってくるの遅いよ…」

「仕事関係の人と、食事してたんだ。メッセージ読んでない?」

「乃上葵さん…?」


 自分で葵の名前を口にすると、渚の目に涙が滲んだ。



「…どした?」

「椿くんが、あの女優さんを好きになったら、私、ここから出て行かなきゃいけない?」

 

 

なぜ、渚がそのように考えたのか、椿には全く理解できなかったが、自分を120歳と言う割には、子供みたいに泣くから、椿は呆れながら言った。



「誰がそんなこと言った?」

「言ってないけど、そう思った…」


 椿は優しく目を細めて、渚の頭を撫でる。


「大丈夫。理由もなく追い出したりなんてしない」



 渚は爪先を高く上げて、椿の頬を引き寄せ、唇を重ねた。


「渚さ…ん…」

「追い出さないで…」


 次に渚が椿にキスをしたとき、涙の味がした。



「渚さん…大丈夫…大丈夫だよ…」


 椿は、渚の不安を感じ取り、渚に応えて、慰めるように、優しく唇を重ねていく。





パラパラ…




「…何?」



 何か細かい物が落ちた音で、椿は唇を離して目を開けた。


 すると、渚の涙が頬を滑り落ちて、白い珠に変わり、床にこぼれ落ちていくのを、目の当たりにした。




 渚は、床にこぼれ落ちたものを見て、小さく息を呑み、椿は考えが追いつかないまま、そっと白い球を拾いあげた。




 それは、優しい乳白色の真珠だった。







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