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人魚の雫  作者: 麻婆豆子


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嘘つき-3

 ある朝。


父親の再婚により、渚と瑠璃るりさんが聡馬の家に引っ越して来たので、聡馬は朝から渚の部屋を作る手伝いをすることになった。




 引っ越し作業のため、渚は無地の黒い長袖Tシャツとデニムを着ていたが、そんな飾り気の無い格好でも、まとう空気はやたらとキラキラしていた。


 女っ気が無かった家が急に華やいだことで、聡馬は中学生みたいにドキドキしていた。


「(俺、このコと一つ屋根の下で暮らすのか…)」


 聡馬は平常心を装って、渚に部屋を案内した。






「この部屋を使って」


「わあ、すごく明るい部屋! えっと…お兄…ちゃん? 手伝ってくれてありがとう。」


 渚は言いにくそうに「お兄ちゃん」と言って、目線を落とした。

ほんのり耳が赤くなっていて、照れているのが分かる。


「(そうだよな。緊張していたのは、俺だけじゃないよな)」




 親の都合で急に家族になった二人だが、聡馬だって緊張や戸惑いを感じていた。


「(仲良くなれなかったら なれなかったで、別に…と思っていたけれど…)」




 聡馬は、歩み寄ってくれた渚の気持ちがすごく嬉しくて、下を向いている渚の不安を和らげるように、肩にそっと手を置いて微笑んだ。


「聡馬。聡馬でいいよ」


 渚は不安気に顔を上げた。


「そう…ま…?くん」

「うん」

「聡馬くん」

「うん。よくできました」

「じゃあ、私のことも渚って呼んで?」

「渚」

「うん。よくできました」


 緊張が解けた渚は、ふにゃっと笑った。




 現実味が無い美貌びぼうを持った女の子の、人間的な表情が見られて、聡馬は心を鷲掴わしづかみにされた。




「(あ、ヤバい。好きになりそう)」




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