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人魚の雫  作者: 麻婆豆子


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ほどけゆく理性、その夜-5

 渚がワンピースに着替えると、膝丈スカートからは白くスラッとした脚が、ノースリーブからは美しい腕が伸びていた。

 そして、ウエスト部分のくびれが、渚のスタイルを引き立てた。



「着たよ〜」


 ひょこっとリビングに姿を現す渚。


「どう、かな?」

「(ああ、綺麗だな…)」



──ああ、ダメだ。



 椿は考えるより先にそう感じた。



「あの、ネックレスうまく着けられなくて…」

「ん。貸して?」


 椿はラムネを腕から降ろし、渚の後ろに回った。

そして、渚に髪を持ち上げさせると、シンプルな一粒パールのネックレスを首にかけた。



「ふふっ、」


 椿の指が首をかすめ、渚は身をよじった。



  ──ダメだって。



「あ。くすぐったい?」

「少し」

「…できた。こっち向いて?」


 渚はくるりと椿の方を向いた。


「似合う?」


 不安げな瞳で見つめる渚に、椿の頬はふっと緩んだ。



──そんな瞳で見ないでよ。



「ううん。お姫様みたいに綺麗って思った」



──欲しくなるじゃん。




 椿の手は、自然と渚の頬に伸びた。


 実際、渚がどんな人か分からないのに。

何かよからぬ目的を持って近づいてきたかもしれないのに。


 椿は全身から湧き上がる欲求に抗えなくなった。




 椿の骨張った指は渚の頬を滑り、艶やかな髪を掴む。




「ごめん」


何に対しての謝罪か自分でも分からないまま、椿は渚を引き寄せ、花びらのような唇を喰んだ。




──

───




 真夜中。


「(やっっってしまった…!)」


 ふかふかのキングサイズのベッドの中で、椿は宙を仰いだ。



 

 昼にあおいを口説いて、夜に渚とキスをした。


「(何やってんだか)」



 葵にギュッと心を掴まれた気持ちと、渚を求めずにはいられない気持ち。




 椿自身、それぞれに感じるものが違うことは、何となく分かっている。

 だが、何がどう違うのか説明がつかず、

自分の気持ちや、行動の輪郭がはっきりとしないまま、眠りについた。





.







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