ほどけゆく理性、その夜-3
椿が自宅に戻る頃には、すっかり夜になっていた。
梨花との出来事で消耗した椿は、玄関で靴を脱ぐと、深く息を吐いた。
その頃、渚は夕方のニュースを見ていた。
テレビ画面の中では、かちっとしたスーツを身にまとった女性アナウンサーがこちらを見つめていた。
『都内の美容クリニックの診察室で、突然30代の女性患者が暴れ出した後、クリニックの外に飛び出し、出入り口前にある階段を踏み外して転倒しました。女性は全身を強く打ち、病院に搬送されましたが、一時間後に死亡が確認されました。現場から中継です。』
『はい。私がいるのは、事件があった都内の美容クリニックです。』
「(ここ…! 一華と取引がある病院だ!)」
『一連の連続不審死との関連も含めて、警察が関係者に事情を聞くと共に、現場検証を行っています。以上現場からでした。』
渚が考え込んでいると、帰宅した椿が声をかけてきた。
「ただいま」
「ぅわ!びっくりした!」
目を丸くして、ビクゥ!!と体を跳ね上げる渚の姿に、椿は思わず吹き出した。
「ふっ…! ははっ!」
「なぁに?」
「いや、そういうリアクションもできるんだなって」
「うん…」
渚は、不意を突かれて
「あ。それと、これ。渚さんの服」
椿は、両手に抱えたハイブランドの硬い紙袋を、テレビ前のローテーブルにドサッと置いた。
「え! 私の服!? どうして!?」
「だって、着替えがないと困るでしょ?」
「それは助かるけど…。でも、こんなハイブランドの服をたくさん…」
「嫌だった?」
「ううん。そういうことでは…」
「じゃあさ、せっかくだから着てよ。…だめ?」
椿は首を傾けて渚の顔を覗き込んだ。
「じゃあ…有り難く…!」
「うん。」
渚は紙袋をそっと開けてみた。
「わ! このワンピース綺麗…!このパールのネックレスも…!」
渚は、黒のレースのノースリーブワンピースと、一粒パールのネックレスを見て目を輝かせた。
「ああ、そのワンピースとネックレスは合うと思うよ」
「これ、着てみてもいい…!?」
「もちろん」
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