ほどけゆく理性、その夜-1
撮影の帰り。
椿は高級ブランドが立ち並ぶ街に寄った。
「いらっしゃいませ、椿様。お待ちしておりました」
「こんにちわ。先日のローンチパーティーでは、お世話になりました」
「あのシリーズの新作、ご用意しているので、是非見てみてください」
「ありがとうございます。楽しみにしていました。あと、今日は女性ものの服も見たくて…」
「かしこまりました。」
スタッフはスマートに、椿をお得意様部屋に案内した。
椿が女性ものを見たいと言っても、この店のスタッフは一切 勘繰ろうとしないし、情報を漏らしたりもしない。
だから、椿は安心して買い物ができる。
椿は、自分が欲しいものを見つつ、スタッフに女性ものの服を持ってきてもらった。
「(彼女、何でも着こなしそうだから迷うな。好みも分からないし…)」
椿は“彼女”の顔を思い浮かべながら「アレがいい」「いや、コレもいい」と頭を悩ませた。
そして、Tシャツにデニム、ワンピースに帽子に靴、アクセサリーと、直感で気になるものをいくつか選んだ。
「(下着は…通販で選ばせよう)」
「ありがとうございます。また遊びに来てください」
「こちらこそ、たくさん見させていただいてありがとうございます」
買い物を終えた椿は、スタッフと店の出入り口で会釈を交わし、呼んでいたタクシーに乗り込もうとした。
その時だった。
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