恋を演じる-3
緊張がゼロになったわけではないが、椿の胸板にもたれかかって指を絡めたり、お互いの唇が触れそうなくらい顔を近づけたりして、葵は幸せな彼女を演じた。
幻想的な光の中で、美男美女が見せるロマンチックな光景に、スタッフたちの目は釘付けになる。
そして、葵の芝居に当てられたのか、椿は葵のことを心から可愛く思えて、最後に葵のおでこにキスを落とした。
「!」
椿の不意打ちにスタジオは沸き立ち、葵の頬はブワッと赤くなった。
「ははっ、顔真っ赤」
「びっくりした…!」
「ごめんね。可愛かったからつい…」
「…もう…」
こうして撮影は無事に終わり、椿と葵はスタッフから花束を受け取り、ブランドの公式SNS用にアップするツーショットを撮った。
《椿さんと乃上葵さんの撮影でした! 何の撮影かはお楽しみに♪》
ツーショットはすぐにアップされ、瞬く間に拡散された。
コメント欄には《わ! 椿くんだ! 広告早く見たい!》《かっこいい×かわいい!》《距離近すぎない…? プロ意識無いの…?》など、様々な言葉が溢れ出た。
「…何コレ」
流行りのカフェで、スマホを片手に梨花は手を震わせた。
スマホの画面の中には、並んで笑っている椿と葵がいた。
「(何で、こんなに冴えない女が椿と並んでるのよ!)」
苛立った梨花は、綺麗にネイルが施された爪を、スマホ画面にカチカチとぶつけた。
「(ていうか、この二人…デキてる…?)」
梨花の心は掻き乱されて、お茶を楽しめなくなり、カンカンとヒールの音を響かせながら、足早にカフェを出た。
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