逃亡者-5
暫くして食事が届き、テーブルには豪勢な食事が並べられた。
「何かパーティーみたい!」
渚が目をキラキラさせると、食べ物の匂いに誘われたラムネまで、ご機嫌そうにホワホワの尻尾をピーンと伸ばしている。
「好きなものとか分からないから色々頼んだ。好きなだけ食べて」
「わぁい!」
「ラムネはこっち」
〈ミー♪〉
椿はラムネに、子猫向けの高級ドライフードを、脚付きのボウルによそった。
しかし、渚は豪華な食事に無邪気に喜んだものの、口にするのは、野菜の生春巻きや鶏胸肉,フルーツなど、ヘルシーなものだけだった。
「渚さんて、食に気を遣っているんだね」
「そお?」
「いつもそんな感じなの?」
「うん。食べたもので体は作られるから」
「ジャンキーなものは食べないの?」
「そうだね…。家族にバレるとすごく怒られるから、なかなか…。ジャンキーなものは、もう10年以上食べていないかも」
渚はフッと視線を落とした。
口元は笑っているが、家族との生活は、少なくとも明るく楽しいものはなかったことが伺えた。
「(家から逃げてきたって言ってたもんな)」
椿は、渚にとって家族の話題は、触れられたくないことなのだと察した。
「まあ、何を食べるかは他人が強制することではないから、無理にジャンクフードを食べろとは言わないけれど、渚さんが何を食べても僕は怒らないよ?」
「あ…そっか」
「せっかく逃げてきたんでしょう?」
「うん」
「だから、食べたいものを食べなよ」
「うん」
渚は細くてカリカリに揚がったフライドポテトを一つ摘んだ。
「…美味しい…」
子供のように顔を綻ばせた渚を見て、椿は少し安心した。
「ならよかった」
しかしその反面、こう思った。
「(食に関しては、僕も人のことを言えた立場ではないけどね)」
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