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人魚の雫  作者: 麻婆豆子


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逃亡者-2

 なぎさと出会ったのは、10年ちょっと前。

僕が医学部の1年生のときだった。


 僕と同じく医師である父のもとに、再婚相手として、僕の義母となる瑠璃るりさんと、連れ子の渚がやってきた。


 真面目な父が、いつもよりも更に真剣な面持ちで、再婚を認めて欲しいと頭を下げた。

 父も瑠璃さんも伴侶と死別していたが、子供が大きくなったタイミングで、第二の人生を考えたのだと僕に説明した。



 初めて渚と瑠璃さんに会ったとき、僕は息をハッと飲んだ。


 母親の瑠璃さんは、年齢不詳の見た目で、内から瑞々しさと透明感が溢れ出ていて、浮世離れした存在感を放っていた。

 娘の渚は、年齢は僕と同じくらいだが、渚もまた、現実味の無い美貌を放っていた。


「(こんなに綺麗なコ、初めて見た)」



 僕の心は渚に鷲掴みにされ、当然のように夢中になった。


 心も体も、渚を求めるようになるまで、そう時間はかからなかった。


  

──

───



 聡馬が昔のことを思い出していたところに、オールバックでスーツをビシッと着こなし、メガネをかけた、いかにも秘書らしい男性秘書が、様子を伺いながら声をかける。


「先生。」

「何だ、林堂りんどう

「あの…。二人のことも心配ですが、もうすぐサプリのストックが無くなり…」

「分かってるよ、そんなこと…!」


 聡馬はイライラしながら院長席の椅子に座り、乱暴に新聞を広げた。

 新聞には、美容クリニック連続不審死の記事が大きく掲載されている。


「一連の事件…。まさかとは思うが…」

「死因はまだ分かってはいないそうですが、最初に事件が発覚したタイミングからして〝あの人〟が関わっている可能性は充分にあるかと」


 二人には思い当たる人物がいた。



「クソッ!!」


 聡馬は新聞をビリビリに破き、拳を机に叩きつけて立ち上がった。


「あいつも、渚も、絶対に探し出せ…!!」




.


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