唇と閃光-5
リビングに一人残った椿は、徐にスマホを手に取った。
「(あ、連絡溜まってる)」
メッセージアプリを開くと、椿の心臓がドクンと波を打った。
《薔くん、専属決まりました!色々教えてあげてね!》
連絡は、昼間会ったマネージャー・藤田からだった。
「(どんどん若手が入ってくる)」
美貌と若さで期待されて業界に入ったものの、いつの間にかいなくなった人なんて、掃いて捨てるほどいる。
重力に負けないように、普段から摂生をして、計算して体を鍛えて、時には口に指を突っ込んで、食べたものを吐くこともある。
焦燥感に支配されそうになった椿は、他のことに気を逸らすためにテレビをつけた。
ちょうど夜のニュースの時間で、女性アナウンサーが神妙な面持ちで、ニュース原稿を読み上げていく。
『続いては、美容クリニック連続不審死のニュースです。
都内の美容クリニックで死亡事故が相次いでいる件について、警視庁は該当する美容クリニックの家宅捜査及び、医師とスタッフに聞き取りを行うなどして捜査を進めていますが、患者死亡との因果関係は不明のままです』
女性アナウンサーは、ゲストの美容医療の専門家に意見を求めた。
『美容整形は、前向きに生きていくための手段となっているのは確かです。
しかし、美容整形には必ずリスクが伴うことを、充分に理解してほしいですね。
そして、世の中全体が、外見至上主義から価値観をアップデートしていく必要があると思います』
専門家は正論を言った。
ただ、正論とは、本気で思い悩む人にとっては、正解ではないことは ままある。
メディアは、顔の小ささや脚の長さ、流行りの顔を持て囃すのに、都合が悪くなれば〝私たちは違いますよ〟という姿勢に転ずることに、椿は釈然としない気持ちになった。
「(でも本音は、シワひとつ許さないじゃないか)」
椿は乱暴にテレビの電源を切った。
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