唇と閃光-4
そんな二人に、マスターは丸めた雑誌で椿の脳天をバシッ!と叩いた。
「ここは盛り場じゃねえ!」
「痛って!! 本気で叩いた!」
「当たり前だ! いい大人が! TPOを弁えろ!」
そうして二人は、喫茶店から追い出された。
この時点で渚を突き放せばよかったのに、なぜか手放し難くなって、椿は素性も分からない渚を連れて帰ってしまったのだった。
─
──
───
「で。さっさと不老の秘密を教えてくれない? 渚さん?」
「教えたら私を追い出す?」
「うーん……」
「じゃ、簡単には教えない」
「ていうか、120歳って何なの? 全然面白くない」
「面白いとかじゃなくて、事実だもん」
「……」
飄々とはぐらかし続ける渚に、椿は疲れを感じ始めた。
「……もういい。好きにしろ」
「やった!」
渚はラムネを抱き上げ、「よろしくね〜」と言いながら背中を撫でた。
「(梨花には全く懐かなかったのに)」
ラムネはすっかり渚に懐き、腕の中でご機嫌そうにしている。
「(ラムネなりに、何か感じるものがあるのだろうか)」
観察するように様子を見ていると、渚はその視線に気付いた。
「あ! 安心して。私、スマホ持ってきてないし、このことを誰かに言ったりできないし、言うつもりもないから」
「……でも、行方不明で大騒ぎになるんじゃ……?」
「大丈夫。大騒ぎなんてできないよ」
渚の表情は、確信に満ちていた。
「ねえ、どこから逃げてきたの?」
「どこだろうね〜」
「おい」
「私、もう眠たい」
「自由かよ」
椿はゲンナリした顔で、廊下の方を指さした。
「客間。廊下に出て右のドア」
ぶっきらぼうな椿に、渚は胸の前で手を組み、小首を傾げてみせる。
「えぇ……一緒に寝てくれないのぉ?」
「寝るか!」
.




