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唇と閃光-3
初対面の女性に突然キスをされた椿。
普通なら怒るところで、警察に駆け込むこともできる。
しかし、はしたないと言ったものの、何故か抵抗する気が起こらなかった。
「(今、何が起こったんだ…!?)」
一瞬だけ、脳に何かが貫通したような感覚。
それが気のせいなのか、それとも他に理由があるのか。
違和感の正体を確かめずにはいられず、椿は渚の頭の後ろに手を回した。
何度も角度を変えて唇が重なった。
だが、そこに甘さなどは無い。
欲情とも違う。
思考を根こそぎ乗っ取られているような感覚。
まるで脳の奥に、別の回路が割り込んできたみたいだった。
やがて、シャボン玉がパチンと弾けたように我に返った椿は、渚の肩を掴んで引き剥がした。
突然引き戻された現実に、椿は息を詰まらせ、しばらく状況を飲み込めず、瞳が揺れていた。
「……何なんだよ、今の……。」
椿の問いかけに、渚は答えない。
ただ、怪しく微笑むだけだった。
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