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人魚の雫  作者: 麻婆豆子


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人気モデルの逆光-1

しなやかな黒髪。滑らかな水光肌。

束感のある長めの前髪の隙間から覗く、意志の強さを感じさせるアーモンド形の瞳。

スッと通った鼻筋に、ツンとした鼻先。

口角がキュッと上がった唇。

そして、185㎝の長身に、程よく筋肉のついた長い手脚。


彼は、アンニュイな表情を浮かべながら、ハイブランドのスーツを遜色なく着こなし、ポーズを決めていた。

   



───人魚の雫




【人気モデルの逆光】

 

 カラフルなベネチアンガラスのシャンデリアの下、重厚感溢れる高級ソファに腰を下ろし、椿は自身が掲載されている雑誌を見て、頭を抱えた。


 人気男性モデルの椿は、20代半ばという若さにもかかわらず、歳を取ることに恐怖を感じている。



 椿は小学生のときにキッズモデルとしてデビューし、それ以来「天使だ」と持て囃されてきた。


 しかし、恐怖は突然訪れた。


 二十歳の誕生日、椿のSNSには祝福のコメントがあふれていたが、その中に──


〝老けたね~昔は天使だったのに〟


というコメントを見つけてしまったのだ。



 一度マイナスのコメントがつくと、便乗するように悪意ある言葉が連なっていく。


〝確かに〟

〝何か弛んできた?〟

〝これで二十歳? 劣化早くない?〟


 見た目が商売道具の椿にとって「劣化」という言葉は、恐怖そのものだった。




 掲載されている写真を不安から細かくチェックしていると、インターホンが鳴った。


 椿は読んでいた雑誌を、機嫌が悪そうにパン!と音を立てて閉じた。


「はい。」


 モニターには宅配員の姿が映る。


『すみませーん、お届け物でーす。』



 届いた箱の中には、高級美容液やサプリなどのスキンケア商品が詰まっていた。

 商品の納品書の隅には《定期購入:5年◯ヶ月目》と書かれている。





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