第2話 仲間(たぶん)ゲットだぜ!
帰りのSHRが終わり、鞄に教科書を詰めていた大牙の元に――
スススッと、二人の男子生徒が忍び寄ってきた。
「や、やぁ、伊勢木くん……」
「ど、どもでござる!」
声をかけてきたのは、片やさらさらヘアーの中性的男子。片や汗だくメガネの時代劇オタク(?)だった。
「よかったら一緒に駅まで帰らない? 三人でゲームの話、しよっか」
「我ら、ただのゲーム好きでござる! 怪しい宗教とかではないでござるッ!」
微妙に圧が強い。
「あ、ああ……いいけど……?」
大牙は少し戸惑いながらも頷いた。
その顔は、どこかうれしそうだった。
あの沙羅の勧誘を受けていたときとは全然ちがう。
「オレ、志乃原レイ。趣味は……スマホゲームでアバター育てるやつ。課金は控えめ」
「拙者、丸山タイシ! 攻略本よりヒロインの攻略に命を懸けておりまする!」
(……クセつっよ)
三人で階段を降りるとき、志乃原がちょっと照れたように言った。
「伊勢木くん、すごいねー。堂々と“ゲーム好き”って言えて。ボクなんか“趣味は読書です”って嘘ついちゃったよ」
「それなっ! 現代においてもゲーマーは差別対象っ! すぐ“陰キャ認定”されるんですゾッ!」
「う、うん……まあ、わかる」
大牙はうなずきつつも、ふと思う。
三人ともゲーム好きとはいえ、まったく好みが違う。でも――
(それが、逆にいいかもしれない)
同じジャンルじゃなくても、同じ“好き”でつながれる。
そう思った瞬間、大牙は小さくガッツポーズをした。
「えっ?」
「おうっ?」
なぜか志乃原と丸山が驚いた。
が、二人の視線は大牙ではなく――校舎の外、昇降口の先を向いていた。
正門へ続く道が、カラフルなユニフォームの上級生たちで大渋滞していたのだ。
「……部活の勧誘だ」
「ぐっ、うっとうしき儀式っ……」
「どうする、大牙氏?」
「正面突破しかねぇっしょ!」
「了解っ!」
「抜刀――いや、抜け道なし!」
三人は無言の意思でフォーメーションを組み、隊列を作る。
先頭・志乃原、中央・大牙、殿・丸山。
ガン無視ダッシュ、開始!
しかし、その途中。
大牙の足が――止まった。
「おい、大牙氏っ!?」
大牙の視線の先。
カラフルな部活ユニの列の中に、ただ一人、制服姿の女子がいた。
見つけてしまった。
「伊勢木くーん、こちらですわー♪」
満面の笑みで手を振るのは、あの理事長の孫娘――東雲沙羅。
アイドルの握手会かと思うレベルで、輝き放ちまくっている。
「……詰んだ」
大牙は、笑顔で迫る“ラスボス”を前に、小さくつぶやいた。