ウサギのミミミ
3ヶ月ぶりの投稿になります。
ぼーっと読んでいただければと思います。
西の小さな村に女の子が産まれた。
エルデと名付けられたその子は、家族にとてもかわいがられた。
エルデの祖父は孫のためにウサギの人形を作り、7歳の誕生日に彼女にプレゼントした。
「このウサギの人形はお前を守ってくれる。大切にするんだよ」
「うん。ありがとう!」
少女はウサギにミミミと名付け、寝るときはいつも一緒だった。
その頃国境付近では魔物との小競り合いが続いていた。
国の騎士団は勇敢に防いでいたが、長期にわたる攻防で徐々に戦力が削られていた。
ある時、騎士団の一翼が突破された。
その隙を衝いて魔物の一団が領内になだれ込んだのだ。
魔物の群れは進路にある村落を破壊し続け、とうとうエルでの住む村にまで近づこうとしていた。
村は大騒ぎとなった。
村人たちは逃げ惑い、混乱の中でエルデはみんなとはぐれてしまった。
逃げる時に抱きしめていたウサギの人形だけが頼りだった。
村外れの小川のほとりまで逃げた時、エルデは背後から魔物のうなり声を聞いた。
振り向くと大人の背丈よりも大きな魔物が立っていた。
エルデは足がすくみ、魔物がこちらを狙っているのを見て気を失った。
その時である。
エルデの下から光が沸き上がり、次いで光は爆発した。
魔物はその光にひるんで立ち止まった。
そして光が薄れた後、そこには巨大なウサギがいた。
目が眩んで立ちつくしていた魔物は、やがて視力が戻ると目の前のウサギに気が付き、うなり声を上げて襲い掛かった。
魔物が腕を振り上げた時、ウサギが動き出した。
機敏に魔物の攻撃を避けると同時に、横に回って強烈な一撃を与えた。
魔物は遠くまで突き飛ばされ、止まったところでそのまま動かなくなった。
巨大なウサギは周囲を見渡すと魔物たちの方に駆けて行き、出会った魔物を次々と倒していった。
その勢いはとどまるところを知らず、果ては国境近くの魔物たちまで殴り倒していった。
魔物たちが次々と倒されると、攻め込んでいた魔物たちはとうとう算を乱して逃げ去っていった。
国境を守っていた騎士たちが事の成り行きに困惑していると、巨大なウサギは光と共に消えていった。
騎士たちは夢でも見ていたのかと思ったが、周囲には倒された魔物がいくつも転がっていたのだった。
村外れの小川のほとりで光が少しずつ和らぎ、やがて消えると、そこにはエルデがウサギの人形を抱いて倒れていた。
しばらくしてエルデを見つけた母親が、
「エルデ!、エルデ!」
と呼ぶと、エルデはふと目を覚まして、
「あれ、ここは?。魔物はいなくなったの?」
とつぶやいた。
母親は目に涙をためながらエルデをしっかりと抱きしめた。
こうして魔物は去り、平和が訪れた。
人びとの間で巨大なウサギに助けられたという話が広がったが、いったいあれは何だったのか、誰にもわからなかった。
エルデの家はどうやら無事だったようだ。
家族と一緒に食事ができるのがエルデにはとてもうれしかった。
夜になりエルデはウサギを抱きながらベッドに横になる。
エルデは夢の中で小さなウサギと遊ぶのだった。