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階段を降りる軽快なリズムが聞こえてくる。彼女に間違いがない。彼にはわかる。そのリズムは他の人とは違う。彼の心をときめかせるリズムだった。
彼は仕事を中断して階段下へと急ぐ。お疲れ様! 元気に声を掛ける。彼女の顔に笑顔が浮かんだ。お疲れ様です。それから二人の会話が弾む。終始笑顔の二人だった。
その日から今へとつながる二人の付き合いが始まった。
彼が今のアルバイトを始めたのは彼女と出会う前のこと。今の会社に入社してすぐのことだった。当時彼に仕事を教えてくれた先輩が今の相棒だ。ちょっとしたアルバイトがあるんだけど・・・・ なんて誘われた。音楽が好きでよくライヴハウスに通っていた彼は、その資金が欲しくて話に食いついた。
初めはずっと、冗談にしか聞こえなかった。銀行から金を貰う? なにをいっているのか意味がわからない。借りるの間違いだと思ったが、それでも意味はわからない。金を借りるアルバイトなんて怪しすぎる。
詳しく話を聞いて、もっと意味がわからなくなった。こいつ、本気で銀行を襲うつもりなのか? その計画内容は緻密で、これならうまくいくんじゃないかと思わせるものだったし、実際にもうまくいった。彼は先輩の誘いを断れず、お金も欲しさに銀行強盗をしてしまった。その後も何度か繰り返し、一度も危険な目にはあっていない。相棒の計画は、恐ろしいほどに完璧で、自分が罪を犯している気にさえならない。彼はまさに、アルバイト感覚で強盗を楽しんでいた。
大金を得た彼だが、生活はまるで派手じゃない。全てのお金は一度洗濯をして海外の銀行に預けてある。アイディアとそのための段取り自体は相棒からだが、実践しているのは彼の方だ。
歩き続けた彼は街中に出ても迷うことなく歩を進める。そして一軒の銀行の中へと吸い込まれていく。
彼の向かいからはもう一人同じ格好をした男が歩いてくる。なんの迷いもなく、彼と同時に銀行の中に吸い込まれていく。




