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二十三、新堂 猛(33) 事務所社長 1


   二十三、新堂 猛(33) 事務所社長


 俺が嫌な奴だっていうのは自分でも分かっている。仕方がないだろ? ヤクザの家系に生まれれば自然とこう育つんだ。

 そんな俺でも恋はする。見せかけじゃない、本物の恋。あいつはまさに、特別だった。

育ちの悪い俺は、偽物の恋愛は大得意だった。初体験も早かったし、顔を合わせていない子供も大勢いるはずだ。けれどそれは、恋じゃない。そうなんだ、故意ですらなかった。

 俺には立派な親父がいる。けれど、お袋が誰なのかはわからない。お袋の代わりは大勢いるけれど、本物を感じたことは一度もない。俺の生みの親はきっと、深い海の底に沈んでいる。親父は、そういう男だった。きっと、金で揉めたんだろう。そういう現実を、幼い頃から嫌という程見ている。

 ヤクザなんて、つまらない。自分のことだけを考えている最低な人間だ。なんだかんだと難癖をつけ、金を巻き上げる。見せかけの信頼を売り物に、自己満足している大バカ者だ。

 俺には子供の頃から友達なんて一人もいない。信頼している仲間はいても、所詮は使いっ走り。本当の信頼とは程遠い。

 そんな俺があいつに惚れた。完璧な信頼。騙されたと知った今でも、信頼は消えない。恥ずかしいことに、生まれて初めてのことだよ。人を信頼するってことが、こんなにも気持ちいいんだと知った。

 あいつとの出会いは洒落たジャズバーだった。普通とは違うフュージョン系のジャズを流していた。俺が愛するジャコパスなんかを平気で流すようなバーだった。

 彼は学生の頃、ロックバンドを組んでベースボーカルを担当していたことがある。当時流行っていたスティングに憧れていたようだ。後付けでポリスにもはまっていたらしい。ロックもパンクもジャズも、更にはオペラさえ超越した最高のミュージシャンだ。

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