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 結婚を決めたのは、彼女からだった。出会いは仕事中。ある事件の聞き込みをしているときに出会った。可愛い子だなと思いながら聞き込みをしていると、それが彼女に伝わったようで、お茶に誘われた。仕事中を理由に一度は断り、礼を言って立ち去ったが、彼女のその顔が頭から離れず、引き返して個人的にと連絡先を聞き、その後の付き合いが始まった。

 二人の関係は初めから今に至るまで良好だ。お互いにお互いを大事に思っている。簡単なようでいて、なかなか難しい夫婦の理想を実践している。

 そんな二人の関係を側で見ているはずの娘には、その思いが通じていない。家にほとんどいない父親は、娘にとっては親戚のおじさんのようなものだ。いい人ではあるけれど、愛を感じはするけれど、ただそれだけ。まともな会話をしたことがないのだから仕方がないのかも知れない。家族にとって一緒に過ごす時間はとても大事なものだ。それが足りていない二人に距離があるのは当然のことでもある。

 たくさん話したいことはあるはずなのに、彼には言葉が出てこない。朝起きてから電車に乗ってここまで来るのに一度も会話らしい会話をしていない。朝の挨拶と、行ってきますの言葉を互いに言っただけの記憶しかない。

 今日はどこに行こうか? 彼の言葉に妻が声を出して笑う。娘は白けた視線を向けるだけ。

もう来てるじゃないの。ここで食事をして買い物して映画を見る予定でしょ?

妻の言葉に、彼はあぁそうかと遠くを見つめる。

どうしてこんなときに・・・・ 彼は周りよりいち早くその異変を察知した。この騒がしさは事件だな。なにがあった? 薬中のバカ者が暴れ出したのか?

 悪いけど、ちょっと見てくるよ。彼は妻にそう言った。またなの?・・・・ 妻の言葉に頷き、歩き出す。娘の顔をチラと覗くと、興味なさげにそっぽを向かれた。気をつけてね。後でちゃんと連絡してよね。妻の言葉を背に感じ、右手を上げて合図する。

 休みの日でも遊んでいる途中でも事件があればすぐに駆けつける。呼ばれても呼ばれていなくても、それが彼の仕事のようだ。今日のように事件を感じただけで足が向かってしまう。病気だな。彼は自分で自分をそう評価している。

 騒ぎの方向に近づくにつれ、なんだかただ事ではないなと強く感じてくる。これほどの騒々しさは今までにない。なにが起きている? 彼の足が早まっていく。

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